管理会計は,単体管理会計技法に注目してきた。しかし,活きた経営のなかで使われる管理会計には単体システムに加えて,長期継続的に利益獲得するためのビジネスの仕組みに組み込まれた管理会計がある。本論文では,管理会計研究の系譜も踏まえて,管理会計が組み込まれたビジネスシステムについて多面的な検討を行う。
佐藤(1975)は,連続生産を行う場合でもロット別個別原価計算が提供する原価情報が優れていると主張した。本稿では,ロット別個別原価計算の計算プロセスが迅速な原価情報の提供を可能にし,信頼性の高い原価情報を生み出す特性を備えているため総合原価計算よりも優れている点を説明し,佐藤(1975)の主張を支持する。
原価計算には,「原価計算基準」でいう原価計算制度と,制度外の原価計算がある。ここでは,制度外の原価計算として,単位当たりの製品原価の計算を取り上げる。実務上は,制度外の原価計算はきわめて重要であるにもかかわらず,その理論的研究は未整備である。本稿では,制度外の単位当たりの製品原価計算の意義と特徴を原価計算制度との比較において明らかにする。
本論文では,①生産販売在庫計画(PSI)をもとに,厳格に損益を積み上げるプロセスである販売業務計画策定(S&OP)の本質が,PSIを所与とした利益最大化問題に帰着すること,および②加工時間短縮とリードタイム短縮の経済効果が,制約条件のPSIを緩和し,潜在価格を実現化する利益であると解釈できることを示す。この原理は、個別企業のみならずサプライチェーンの全体最適を導く新たなコストマネジメントの構築へ向けた重要な視座を提供する。
本論文では,従来の標準原価管理の抱える①標準決定時・更新時に行う時間研究等のコストが高い,②決定された標準が製造現場の実状を反映していない可能性がある,③差異の認識時にその発生原因候補の特定が難しい,という問題に対し,IoTセンサーを用いて製品・工程毎に作業1回の作業時間を取得し,作業時間差異を計算する原価管理アプローチを紹介する。そしてこのアプローチの利点として,①IoTセンサーにより毎回の作業の作業時間を測るため,製造現場の実状を反映することができる,②正常な差異・異常な差異の判別が容易になる,③差異の原因候補の特定が容易になることを挙げている。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら