Supplement of Association of Next Generation Scientists Seminar in The Japanese Pharmacologigal Society
Online ISSN : 2436-7567
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Displaying 1-5 of 5 articles from this issue
  • Hirotaka Kanoh
    Session ID: 2024.1_AG1
    Published: 2024
    Released on J-STAGE: August 22, 2024
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    Toll-likereceptor(TLR)やCaspase(CASP)ファミリーを介する炎症・細胞死応答は、外来性の病原体成分だけでなく、生体内で生じた内因性リガンドによっても惹起される。近年の研究により、それらの内因性リガンドが、がんやメタボリックシンドロームをはじめとする多様な疾患の増悪因子となることが示されており、その全容解明に向けた探索が続いている。演者ら(東北医科薬科大学・薬学部在籍時)の研究グループでは、血清中に存在するスフィンゴ糖脂質:ガングリオシドGM3およびグロボ系糖脂質Gb3が、リポ多糖受容体:TLR4の内因性リガンドとして作用すること、その生理活性が脂質部分(セラミド)のアシル鎖構造(鎖長や不飽和度)の違いによって制御されることを明らかにしてきた[KanohH et al, EMBO J. 39: e101732, 2020 / Nitta T, Kanoh H, et al,Glycobiology 29: 260-268,2019]。さらに最近、ガングリオシドGM3が、細胞内リポ多糖受容体の内因性リガンドとしても作用し、炎症性細胞死のひとつであるパイロトーシスの活性化制御に関与する可能性を見出した(未発表)。本演題では、スフィンゴ糖脂質を内因性リガンドとした炎症・細胞死の分子メカニズムについて、国内外の研究動向を交えてご紹介する。

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  • Yoshiaki Suzuki, Rubii Kondo, Yuji Imaizumi, Hisao Yamamura
    Session ID: 2024.1_AG2
    Published: 2024
    Released on J-STAGE: August 22, 2024
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    Ca2+チャネルは下流の Ca2+感受性分子と複合体を形成して刺激特異的に情報を伝達する。この局所的なCa2+シグナルにより情報が伝達される微小領域をCa2+マイクロドメインと呼ぶ。Ca2+マイクロドメインの形成には、種々のシグナル分子を局在化させる足場タンパク質が重要である。我々は、足場タンパク質カベオリン(cav)-1により血管平滑筋細胞(VSMC)の細胞膜近傍に形成されたCa2+マイクロドメインが、血管の収縮性を適切に制御することを明らかにした(JBiol Chem, 2013; J Biol Chem,2019)。動脈に対する様々なストレス負荷は血管構造の再構築(血管リモデリング)を引き起こし、多様な循環器疾患を引き起こす。しかし、血管リモデリングの発生および成熟に関する機序については不明な点が多い。我々は、動脈に持続的な圧負荷が加わると、細胞内Ca2+濃度([Ca2+]cyt)上昇がcav1によって形成されたCa2+マイクロドメインにおいて、興奮転写連関(E-Tcoupling)により炎症促進遺伝子群の転写に変換されることを発見した。これにより、マクロファージの血管壁への集積と炎症によるVSMCの脱分化・増殖が誘発され、血管リモデリングが「発生」するという新たな概念の提案に至った(PNAS,2022; Biol Pharm Bull,2022)。VSMCは種々の刺激に応じて部分的に脱分化し、増殖型VSMC(pVSMC)に変化する。pVSMCがCa2+シグナリングを介して増殖や遊走することで病変が「成熟」し、動脈硬化を基礎とする多様な疾患につながる。我々は、細胞膜-小胞体架橋分子ジャンクトフィリン(JP)-2が、Ca2+遊離活性化Ca2+(CRAC)チャネルを中心とするCa2+マイクロドメインを形成し、カルシニューリン・NFAT系を駆動することでVSMCの増殖に関与することを見出した。以上より、VSMCのCa2+マイクロドメインは、正常な血管機能のみならず、E-Tcouplingを介して血管リモデリングの発生と成熟の両方に関与すると考えられる。

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  • Shun Kageyama
    Session ID: 2024.1_AG3
    Published: 2024
    Released on J-STAGE: August 22, 2024
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    大隅博士らによるオートファジー関連遺伝子同定以降、逆遺伝学的手法によりオートファジーの減弱が様々な疾病(腫瘍形成や神経変性)の発症原因となること、それら病態発症にはオートファジーによる変性タンパク質や異常オルガネラの選択的な分解障害が関与することが判明した。これらのことは、オートファジーはユビキチン−プロテアソーム系と同様にその選択性を介して多様な生命現象を厳密に制御することを意味する。しかし、オートファジーによるタンパク質凝集体や異常オルガネラの認識、隔離、分解機構(選択的オートファジーの分子機構)も、それらの破綻による病態発症機序もほとんど不明であった。所属研究室では、構造生物学的手法と独自のin vitro再構成系、さらに革新的な液滴精製法や世界初の選択的オートファジー阻害マウスなどを駆使し、選択的オートファジーの作動原理やその病態生理的意義の解明を行ってきた。本講演では、演者らが中心に進めてきた選択的オートファジーとユビキチン−プロテアソーム経路、抗酸化ストレスシステムKeap1-Nrf2経路とのクロストーク、そしてp62液滴の分子病態を紹介したい。

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  • Tatsuhisa Tsuboi
    Session ID: 2024.1_AG4
    Published: 2024
    Released on J-STAGE: August 22, 2024
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    Mitochondria are a hub for multiple cellular functions and play an important role in cell aging and neurodegenerative diseases. Mitochondria are also very dynamic structures with fluctuating morphologic transitions in response to cellular and environmental perturbations. While there have been studies investigating the pathways and conditions that alter mitochondrial morphology, the connections between these morphological changes and gene expression regulation are still poorly understood. We recently found that cells use translation elongation and mitochondrial spatial organization to fine-tune mitochondria-specific gene expression. Our single-molecule visualization techniques showed that changes in mitochondrial volume fraction affected the localization of certain nuclear-encoded mRNAs to the surface of the mitochondria (Tsuboi* et al., 2020). I will discuss general principles that underlie the control of gene expression through mitochondrial morphological change during cellular aging and fluctuating environmental conditions (Khan et al., 2024). I will further introduce our recent progress in image-based drug screening methodology.

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  • Toshiyuki Kowada
    Session ID: 2024.1_AG5
    Published: 2024
    Released on J-STAGE: August 22, 2024
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     我々は有機合成化学的に創出した機能性小分子を用いて生命現象の理解に取り組んでいる。

    (1)細胞小器官標的型Zn2+蛍光プローブの開発

     亜鉛は鉄についで多く体内に存在する必須微量元素であり、蛋白質の構造安定化や補酵素として機能している。しかし、細胞内で遊離イオンとして存在するのはごく微量(pM~nM)であり、ほとんどの亜鉛は蛋白質に結合した状態で存在している。細胞内オルガネラのZn2+恒常性は、亜鉛トランスポーターやメタロチオネインにより厳密に制御されている。恒常性の破綻はZn2+関連蛋白質の成熟と機能に影響を及ぼすため、神経変性疾患など様々な疾患の原因になり得る。そこで我々は、Zn2+の生理的機能解明における基盤技術の創出を目指し、これまでに、pH変化に影響されにくい緑色蛍光Zn2+プローブZnDAを開発し、HaloTag標識技術を利用することで様々なオルガネラ内遊離Zn2+濃度の定量解析を達成してきた。

    (2)細胞内蛋白質の機能解析のための光操作技術の開発

     細胞内の多くの蛋白質は、特定の時間・場所でその機能を発現している。したがって、細胞内蛋白質の人為的な局在制御法は、蛋白質機能の解明やシグナル伝達経路の詳細解析のための有力なツールである。その代表的な手法として、光受容蛋白質を用いるオプトジェネティクスがあり、光刺激の程度・時間を調節することで、同一のシグナル伝達経路で異なる細胞応答を誘起可能であることが示されている。

    ごく最近、我々はフォトクロミック蛋白質二量化剤pcDHを開発し、生細胞内の蛋白質間相互作用を光操作する技術を確立した。pcDHは、大腸菌ジヒドロ葉酸還元酵素(eDHFR)に対するフォトクロミックリガンドとHaloTagリガンドから構成されており、紫外~可視光照射によるアゾベンゼン骨格の可逆的な光異性化を利用することで、eDHFRとHaloTag間の蛋白質間相互作用を光制御可能である。この性質を活かし、生細胞内で標的蛋白質局在を光照射依存的に繰り返し制御を達成している。さらに、pcDHを用いた蛋白質局在変化に要する時間は1秒未満であり、既存の技術と比較しても十分早い。そこで、本技術を用いたマイトファジー誘導の光制御法を確立した。本光制御技術は、高速かつ光可逆的な蛋白質局在の制御が可能なため、様々な細胞内シグナル伝達の分子機構解析に応用できると期待される。

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