2022年2月24日にロシア連邦(ロシア)軍がウクライナへの侵攻を開始した。国際的に非難されている1カ月以上にも及ぶこの行為は、現時点(2022年4月6日)でもウクライナの医療制度に壊滅的な影響を及ぼしている。
本稿では、ロシアに対する制裁の一環として実施または考慮されているボイコットのうち、学術分野におけるボイコット(アカデミックボイコット)が与える医療や健康への影響を中心に報告した。医学系雑誌のボイコットによって、ロシア内での貴重な事例や治療手技が世界に発信できなくなり、学術的協力事業でのボイコットは研究の質の低下や研究の停滞などを招くと予想される。その結果として、世界中の医療の発展や健康維持にも悪影響が出ることが懸念されている。
本稿ではこれまで報告されているアカデミックボイコットに関する報告、また世界の医学系雑誌と本邦での学術団体におけるロシアへの対応をまとめた。
健康や福祉の一端を担う者として、今我々が何をすべきか、医療や健康、そして平和や人権の意味を改めて考えるきっかけとして、本稿がお役に立つのであれば幸いである。
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