農村研究
Online ISSN : 2436-9047
Print ISSN : 0388-8533
2018 巻, 127 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • —農協系統に焦点をあてて—
    野口 敬夫
    2018 年2018 巻127 号 p. 1-17
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2024/04/23
    ジャーナル フリー

    本稿では日本の農協系統に焦点をあて,アメリカ・日本間における粗飼料サプライチェーンの構造について分析した。2000年代後半以降,粗飼料の主な輸入先であるアメリカでは生産が減少する一方,UAE・中国への輸出が拡大し,粗飼料の生産者販売価格が上昇している。それに加えて2012年以降,円安が進んだことから,日本において粗飼料の輸入価格が高騰している。こうした状況に対し,農協系統はアメリカ現地に農場・倉庫の設置,トラックの所有など粗飼料生産・流通における設備投資の強化や,取扱規模の拡大に重点を置いた事業再編を進め,高品質な乾草やヘイキューブの安定調達,価格メカニズムの把握・調整,スケールメリットによるコスト削減に努めている。

  • 岩本 博幸, 間々田 理彦, 田中 裕人
    2018 年2018 巻127 号 p. 18-28
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2024/04/23
    ジャーナル フリー

    本稿の課題は,観光客を主な対象としたレンタカー利用を通じてクリーンエネルギーの地産地消の推進の可能性について,バイオエタノール使用車を事例に観光客による評価分析から検討することにある。レンタカーの選択実験を実施し,ランダムパラメータ・ロジットモデルによる観光客評価の定量的な分析を試みた結果,以下の3点が明らかとなった。

    第1に,バイオエタノール使用車および比較対象とした電気自動車は,ガソリン車と比べても肯定的に評価されていることが示された。第2に,沖縄県産さとうきびから生産されたバイオエタノール,沖縄県内の風力発電で得られた電力を使用することによって,バイオエタノール使用車および電気自動車の評価はさらに高まることが示された。第3に,特定層に偏らず観光客の広い層で県内産のクリーンエネルギーの「地産地消」について理解が得られる可能性があることが示唆された。

  • —都市近郊農村と農業地域農村の比較分析—
    髙橋 優希, 泉田 洋一
    2018 年2018 巻127 号 p. 29-42
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2024/04/23
    ジャーナル フリー

    カンボジアでは近年の急速な経済成長のもとで農地取引が活発化している。農民の農外移動に伴う農地処分が背景にあるが,農地保有変化は地域農業の在り方や,相続制度に依存しており,一般化は容易ではない。本稿はカンボジアにおける農業地域と都市近郊に位置する二村を対象として,過去10年間の農地保有変化とその規定要因について検討するものであり,とくに同国の均分相続制度を念頭において分析を行う。分析の結果,農業地域の農村における規模別農家比率の分布には明確な変化は確認されなかったが,都市近郊農村では規模の全体的な縮小がみられた。その中身をみると,両村ともに均分相続による農地分与が保有農地の主要な減少要因であったが,農業地域の農村では小規模農家による農地購入が減少部分を相殺していた。ただし,農地購入は経営大規模化をもたらしていない。調査農村に関する限り,均分相続による農地保有規模縮小圧力の強さが確認できる。

  • —韓国慶尚南道密陽市の事例を中心として—
    尹 堵鉉, 高柳 長直
    2018 年2018 巻127 号 p. 43-59
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2024/04/23
    ジャーナル フリー

    韓国ではベビーブーム世代が企業から退職し,帰農者が増加している。日本では帰農者が定着するには地元住民と良好な関係を築くことが重要であると言われてきたが,韓国ではその点は十分検討されてこなかった。本稿は,韓国の帰農者の特徴を確認したうえで,帰農者と地元住民とがどのような社会関係をもつかを明らかにすることを目的とする。事例地域の密陽市において帰農者は,帰農後の所得によって2つのタイプに分けられる。高所得帰農者は前職を生かしながら農業経営の安定を図っているが,低所得帰農者は,住宅支援を受けることがその主な目的である。つまり帰農は都市労働者のセーフティーネットの役割を果たしている。また,韓国では比較的簡単に農地購入が可能であり帰農者の基準も緩いことも,低所得帰農者が混在する一因である。いずれの帰農者も,地元住民と社会的関係をもつよりも,帰農者どうしで関係をもつことが明らかになった。彼らはインターネット上でコミュニティーを形成し,地元農家から営農情報を得る必要性が低いことも,帰農者の地元住民との関係が弱くなっている要因である。

feedback
Top