1) りんご清澄果汁沈澱防止を目的として金属塩による精製につき実験し,炭酸石灰を用いて製造試験を行つた。
2) 清澄果汁の溷濁および沈澱を生成する膠質物は,金属イオンにより特に2, 3価イオンのAl, Ca, Mg, Mn, Cu, Zn, Pb, Fe等によつて凝析を容易に生成する。
3) 炭酸石灰では0.3%量用い,加熱し,熱時濾過する事により膠質を有効に除去できた。この場合炭酸石灰添加後短時間にて膠質の除去処理する場合,濾液はなお幾分溷濁するが,長時間(12~24時間)になるに従い,この溷濁は減少する。実際においてこの溷濁は脱Ca後加熱する事により容易に凝析するので,添加後間もなく(1時間位)加熱により膠質を除去してよい。
4) 過剰のCa (Ca処理による膠質除去)は蓚酸により蓚酸石灰として除かれる。除去する限度は原果汁のpHを目標とする。炭酸石灰が0.3%加えられた場合,蓚酸は約0.25%で大部分除去される。
5) Ca除去不足等によつて酸を添加する場合,容易に溷濁を生ずるので,添加後一旦加熱冷却後濾過して壜詰するのがよい。この壜詰温度は前者より低く行うがよい。酸として,クエン酸,酒石酸は石灰塩として析出するので,コハク酸が適当であるう。
6) 本法により得られた果汁は色沢において,普通果汁と変りなく,また処理による加熱臭も附さない。食味は処理による異味が附さないが幾分旨味が減じている様である。処理による栄養成分の減少は稀釈される事の外大なる変化がない様である。
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