リハビリテーションと応用行動分析学
Online ISSN : 2759-2588
Print ISSN : 1884-2658
5 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 川口 敬之, 山本 明美, 佐藤 悦子, 木村 幸子, 白木原 葉子, 澤山 透, 鈴木 誠, 福田 倫也, 宮岡 等
    2015 年 5 巻 p. 1-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,精神科作業療法(精神科OT)における対象者の行動特性や能力障害を評価する活動特性尺度(Activity Profile Scale for Patients with Psychiatric Disorders:APS)を開発し,その因子構造,内的整合性,信頼性を検証することを目的とした.APSは,「意欲」,「理解力」,「集中力」,「作業力」,「交流」,「協調性」の6項目を5段階で評価する尺度として構成された.活動特性尺度は,精神科OTに従事する専門家よる内容妥当性を満たし,因子分析にて1因子構造を有することが確認された.また,統合失調症,うつ病,双極性障害を有する161名の患者を対象として尺度の内的整合性と信頼性を検討した結果,Cronbachのα係数は0.84であり,intraclass correlation coefficient(ICC)は0.85だった.以上の結果より,APSは十分な内的整合性および信頼性を有することが示唆された.本研究において開発したAPSは,様々な疾患を有する患者に対する精神科OTの効果判定に貢献できる可能性があると考えられた.
  • 田辺 尚, 赤木 厚美, 釣 洋介, 遠藤 有紗, 千葉 直之, 遠藤 晃祥
    2015 年 5 巻 p. 6-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    重度認知症を呈している患者様の,病棟トイレ動作獲得に対して,応用行動分析学的介入と対象者に合わせて作成した般化プログラム使用の効果について検討した.対象は90代女性であり,身体機能面に著明な低下は見られないが,声掛けを行ってもブレーキに注目せず,会話の内容等,認知機能面の低下により動作獲得に至らず,トイレ動作は介助で行っていた.『病棟トイレでのトイレ動作の獲得』と標的行動を設定し,以前から獲得している行動の把握と先行刺激・口頭指示・賞賛方法の整備を行った.介入期は口頭指示のみで動作の生起化,習得した動作の連鎖化とプロンプトのフェイディング,習得した動作の病棟般化を目的に介入期を3相に分けて行った.その結果,対象者は病棟職員の監視下でトイレ動作可能となった.従って,応用行動分析学を用いた行動随伴性の形成による動作練習と対象者に合わせて作成した般化プログラムは,認知症患者における病棟ADL般化練習に有効であると示唆された.
  • 山本 祐太, 釣 洋介, 井上 翔太郎, 佐藤 日佳里, 遠藤 晃祥
    2015 年 5 巻 p. 12-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    認知症患者への起き上がり動作や移乗動作における行動分析学的介入方法の有効性は報告されているが,連続して繰り返される動作に関しての報告はまだない.本報告は,認知症患者の病棟での車椅子自立移動を目指し介入を試みた.対象者は90歳女性.右大腿骨頚部骨折術後から約1年経過し,認知症を呈した方である.介入Ⅰ期では病棟への般化も考え,15mの距離を細分化し三段階の難易度に設定した.介入Ⅱ期はプロンプト・フェイディングを実施した.結果,介入Ⅰ期は初日で15mの直進駆動が可能となり,介入Ⅱ期は,6日目で病棟にてプロンプトが無くとも可能となった.病棟での車椅子移動が出来ない理由を対象者の身体機能の問題に捕らわれるのではなく,適切に駆動動作を繰り返すことが困難であるという行動の問題(技術の問題)と捉えたことが,目標距離の移動を可能にしたと考えた.また,目標距離を細分化し行動が完遂できる難易度に設定したことで,行動が強化されやすくなり病棟での車椅子自立移動獲得の要因になったと考える.
  • ~ベッドサイドリハ拒否の症例を経験して~
    釣 洋介, 千葉 直之, 田辺 尚, 遠藤 有紗, 遠藤 晃祥
    2015 年 5 巻 p. 17-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,認知症患者のリハビリテーション拒否という問題行動に対し,機能的アセスメントを用いて介入を行った.対象者は,脳梗塞再発後に入院している86歳男性で,指示理解も困難な状態であった.リハビリテーションにおいても,特に下肢の関節可動域練習時に拒否行動が強く見られた.まず,最初に機能的アセスメントを実施し拒否行動の三項随伴性を評価した.その結果,セラピストの注目が強化子となり,拒否行動が維持されているという仮説が成り立った.介入方法として,セラピストの注目が減少しないよう環境設定をし,拒否行動又は拒否発言を消去するのではなく,適切な行動である関節可動域練習を受け入れるという時間を延長させていくこととした.結果,ベースライン期と比較して介入期では関節可動域練習の時間が延長し,コミュニケーション面でも拒否的ではない自発話数の増加が見られた.これらのことから,機能的アセスメントによる介入は,認知症者の問題行動に対して有用である可能性が示唆された.
  • ~車椅子操作を獲得した症例を経験して~
    遠藤 有紗, 千葉 直之, 釣 洋介, 田辺 尚, 鈴木 誠, 遠藤 晃祥
    2015 年 5 巻 p. 22-26
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本報告は,重度の認知症を呈した対象者に対して,車椅子操作(ブレーキを掛ける,フットレストを上げる)をシェイピングの技法を用いた練習を行い,その効果について検討した.自発的な行動がなく,言語理解の困難な対象者に対し,身体介助であっても動作が遂行された際には必ず強化刺激が随伴される環境を設定した介入を行った.結果,介入前には見られなかった適切な行動が増え,最初の声掛けによって車椅子操作の獲得に至った. このことから,重度認知症であっても,適切な行動に対して強化刺激が随伴される練習を繰り返し行うことは,動作学習をより効果的にさせることが示唆された.
  • ~病棟生活で不適切な立ち上がり動作が習慣化している患者様を対象に~
    田辺 尚, 中山 直之, 遠藤 晃祥
    2015 年 5 巻 p. 27-33
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,病棟生活は自立しているものの代償動作を伴ったリスクの高い立ち上がり動作が習慣化している対象者に対して,新たな行動随伴性を形成することで,安全な立ち上がり動作獲得が可能か検討した.標的行動は「病棟生活でも行える安全な立ち上がり動作」と設定した.リハビリテーション場面で新たな立ち上がり動作を獲得しても,病棟生活では習慣化している動作を行う可能性が高いため,習慣化している動作を安全な方法に近づけることとした.介入方法は,座面の補高量の変化とプロンプト提示量の変化の2期に分けて実施した.結果は,動作獲得に至ったが,提示していたプロンプトが弁別刺激となってしまい動作の生起率に差が出てしまった.しかし,弁別刺激のない場合でも獲得した方法で行えるため転倒の危険性は低下し,異なる場所でもプロンプトがあれば動作が生起されるようになった.以上の結果から,弁別刺激を用いた新たな行動随伴性を形成することで,習慣化したリスクの高い動作であっても,安全な方法へ修正可能であることが示唆された.
  • 中島 秀太, 加藤 宗規
    2015 年 5 巻 p. 34-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    重度認知症を有する症例を対象として,段階的難易度調整と称賛を用いた介入が立位保持とトイレ動作時の介助量に及ぼす影響を検討した.【方法】症例は,多発性脳梗塞発症後に立位保持困難となった80歳代女性である.改訂長谷川式簡易知能評価スケールは9点であり重度認知症を認めた.介入前は手すりを使用しても30秒間の立位保持にとどまり,トイレ介助は二人介助での実施であった.介入は前方に支持物を置いた前腕支持から始め,4段階の難易度調整を行った.段階の引き上げ基準は3実施日連続で60秒間の立位保持達成とし,課題が成功した場合には称賛を行った.【結果】介入7日後には60秒間の立位保持が可能となり,一人介助でのトイレ誘導が可能となった.介入期間内に機能的変化を認めなかった.【結論】本症例に対して行った段階的難易度調整と称賛を用いた立位保持訓練は,立位保持とトイレ動作介助量軽減に有効であったと考えられた.
  • 千葉 直之, 遠藤 有紗
    2015 年 5 巻 p. 39-40
    発行日: 2015年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top