「生きる力」(自己教育力)の育成を主眼とした教育観を提示した新学習指導要領は、小・中学校においては、平成12年度よりの移行措置を経て、平成14年度より全面実施された。これを受け、「総合的な学習の時間」等の実践が試行錯誤されていると共に、この学びを支える柱として、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段」を活用すること、「学校図書館を計画的に利用すること」が強調されている。しかし、現状の学校図書館は、全体として図書館資源は充実しているとは言い難く、急速に整備されつつはあるもののデジタル資料へのアクセス環境整備、担当職員への組織的研修体制なども充分であるとはいえない。こうした状況において、公立図書館は地域の学校図書館に対し連携・協力を行なうことが強く求められている。本稿では、学校図書館の利用者でもあるヤングアダルトを対象とした公共図書館サービスであるヤングアダルト・サービスについて論じる。具体の方法としては、ニュージャージー州立図書館のガイドラインを主たる対象に取り上げ、特にネットワーク化、デジタル化に対応したサービスの新しい展開について分析・考察をすると共に、日本における同サービスの方向性を探る。ニュージャージー州を対象としたのは、まず、米国は図書館サービス全般において先進事例を有していること、その中でもニュージャージー州はヤングアダルト・サービスのガイドライン刊行、その浸透具合のフォローアップ調査、調査結果を反映させてのガイドラインの改訂といった長期に渡っての継続的な取り組みがみられる唯一の州であることによる。
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