わが国における自転車工場の分布,およびその立地要因につき検討した結果,次のような事実が明らかになつ.
自動車工場の分布には販売上の要因が強く働いている.工場は「製造卸」の集中する東京,大阪,名古屋の3地域に全国総数の約75%が集中し,各地域内においても製造卸に近接した分布をとつている.すなわち,工場の分布を原則的に規定するものは「製造卸」なのである.
しかし,製造卸地域という第1次立地網
1)のなかにあつても,名古屋の場合を除き,東京,大阪では必ずしも工場の分布と製造卸のそれとは地区的に一致していない.東京では製造卸の鱒する台東区に対し,それ麟接する荒川地区に工場の集中が密である.これは安い労働力の存在,下請工場の分布などの要因によるものであり,また江東地区への集中は在来技術との関連が大である.大阪地域においては,製造卸地区たる大阪市東南部に対し,工場は饗地区に密集し,地域内において,原則的傾向を歪曲しているが,これは創生期における技術者の存在,安い労働力が豊富であることなどが主要因となつたものであり,それに,下請業者の存在,海外需要などの条件が加わつたものである.また,堺地区,荒川地区などには加算的な立地集積力も強く作用し,集中化に拍車をかけている.そして,これら工場の集中する東京,大阪,名古屋の3地域は,各地域の立地条件を反映して,それぞれに特色ある立地型を現出している.
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