バイオフィードバック・ツールを 「社会」 で活用してもらうためには, ①どこで, どのように使われるのが望ましいのか仮説設定をし, ②導入・継続運営するのに要するリソースを計算し, ③社会実装する段取りを決める, という3つのプロセスが必要となる. その上で, 仮説設定と強化のために関係する見込みのある企業等と意見交換し, ステークホルダー (利害関係者) を同定できたら, 行政にも働きかけることが肝要となる. 
 本シンポジウムでは, バイオフィードバック・ツールの社会実装の例として, ゲーミフィケーションを紹介した. まず演者らは, 「認知行動療法的アプローチによるココロの元気が出るアプリ」 を, 大手
ゲーム会社
の協力を得て開発をした (中尾ら.第42回日本バイオフィードバック学会学術総会発表). 完成したアプリは, 1年間の限定配信で, 1万ダウンロードを超える反響を得た. 同時並行して, 次世代アプリに実装するための認知行動療法プログラムの開発を行い, その臨床効果を示した (Shirotsuki K, et al. BioPsychoSoc Med 2017 Sep 19 ; 11 : 2). これらの活動は, 神奈川県の 「未病プロジェクト」 研究の1つとして採択され, 2015年度から3年間の助成を受けた. 
 その経験から, ICT・AI社会でバイオフィードバックを今後さらに発展させるため, 4つの方向性を提言した. ウェアラブル端末への実装 (健康状態の把握), 生活補助ツールとしての活用 (生活機能の介助), 生活空間への活用 (個人-環境インターフェイス), バイオフィード従事者の新たな役割 (健康マネジメントのリーダーシップをとる人材育成) の4つである. 
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