本研究では,西ドイツの代表的な集約的農業(ガルテンバウ)地域であるハンブルク周辺部,アルテス・ランドの果樹栽培を取り上げ,その経営の特質と存立基盤を明らかにした.この地域では,1960年以降経営規模の拡大,リンゴ栽培への専門化,わい化栽培の導入,農用機械化,農用施設(とくに貯蔵庫)の建設・整備,近代的な排水システムの建設等を通じて土地生産性,労働生産性の向上がはかられてきた.こうした生産性の高い果樹栽培を存立させた条件,すなわち,存立基盤は,1.自然的条件,とりわけ土壌と気候が果樹栽培に適していたこと,2.大都市市場に近接しており,出荷が容易であること,さらに,さまざまなかたちの出荷が可能であること,3.農業労働力の雇用が比較的容易であること,4.農業に関する情報やサービスが得やすいこと,5.経営規模が大きく,経営の基盤が強固であること,6.都市化に伴う農業環境の悪化が少ないこと,であった.5と6の要因としては,西ドイツの農業政策とハンブルクとその周辺地域を含む地域計画が高い整合性をもっていることがあげられる.
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