現在、我々は学振科研および厚生科研による課題、特に東シナ海を取り巻く地域のダニ媒介性新興再興感染症の拡散経路および病原体の進化について調査を進めつつある。今回は、2007年度の秋冬に長崎県と鹿児島県の離島、また朝鮮半島南部と済州島で行った調査のうち、ツツ
ガムシ
について報告する。調査の時期と地区は以下の通りである。
2007年11月23-25日長崎県(五島列島、平戸島、長与町)
2007年12月05-09日韓国(馬山市、梁山市、済州島)
2007年12月14-17日鹿児島県(トカラ列島の悪石島、諏訪之瀬島)
2007年12月14-17日長崎県(五島列島、長与町)、鹿児島県(甑島列島)
2008年01月11-13日鹿児島県(トカラ列島の口之島、平島)
各調査地において野鼠類を生捕し、体表に寄生するツツ
ガムシ
幼虫を生体観察、それから封入して同定した。結果として、まずトカラ列島の口之島のクマネズミにタテツツ
ガムシ
を認めた事実は、昨今、本邦の東シナ海に面する島嶼においてツツ
ガムシ
病の散発が確認され出した状況で、媒介種推定の上で示唆に富む知見の一つとなる。一方、韓国南部の梁山市と済州島でもツツ
ガムシ病有力媒介種と目されるタテおよびフトゲツツガムシ
がみられ、中でも梁山市のセスジネズミにみた多数のツツ
ガムシ
(最低でも一個体当たり128個体)のほとんどはタテおよびフトゲであった。また、済州島のチェジュセスジネズミにも少数ながらタテを確認した。韓国においてはツツ
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病の公式患者数が2006年には6,420人に上るとの統計が言われるが、今回みたような高密度に生息する媒介性ツツ
ガムシ
の存在が患者多発の一要因と言えるかもしれない。
共同研究者:川端寛樹(国立感染研)・呉 弘植(韓国済州大学)
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