外生菌根菌にはマツタケやホンシメジなどの優秀な食用菌が多く含まれている.これら食用菌根菌は,これまで菌根合成実験をもとに子実体発生を調べた例はほとんどない.本実験では,多様な外生菌根菌の菌根苗を用いて子実体を形成させることを目的とした.
外生菌根菌23種33菌株(シメジ属,
キシメジ属
,ショウロ属,ヌメリイグチ属等を含む)を実験に供試.アカマツ(
Pinus densiflora)を宿主植物に用い,バーミキュライトを支持体として菌根合成を行った.培養装置内(20-22℃,8000lux)で4ヶ月間培養し,作出した菌根苗23種33菌株計57本を,オートクレーブ滅菌したアカマツ林土壌を詰めたガラスビンへ移植し,室内で6ヶ月間順化した後,滅菌土壌を詰めた約700mL容の小型ポットに移植して約14ヶ月間屋外で順化し,その後4L容の滅菌土壌を詰めたワグネルポットへ移植して,ガラス温室内の恒温装置内で順化した.恒温装置では,菌根苗地上部は太陽光が当たるよう外部に出し,地下部は遮光・断熱し土壌温度を20℃付近になるように制御した.温度制御は装置内に張り巡らせた水流管にウォーターバスで温度制御した水を流すことで行った.恒温装置での約6ヶ月間の順化後,菌根の生残を確認した.
順化期間中に菌根苗は良好に生育し,順化終了後に供試した菌根苗57本中28本で目的とする菌根菌の生残が確認された.
キシメジ属
,シメジ属,ツチグリ属,ヌメリイグチ属等の幅広い菌株で菌根苗の確立に成功した.ショウロやホンシメジなどの菌糸生長の早い菌株ではポット内に菌糸の増殖が確認された.また,菌糸生長の遅い
キシメジ属
菌でも多くの種で菌根苗の確立に成功した.さらに,順化期間中にスミゾメシメジとミネシメジで子実体発生が確認された.スミゾメシメジでは初の人工的な子実体発生となった.
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