アレルギー性疾患の診断, 治療に抗原の検索は重要であり, I型アレルギー性疾患の代表とされている気管支喘息においても抗原検索のため皮膚反応が広く用いられている.多くの気管支喘息患者はキサンチン誘導体, β刺激剤, chemical mediator遊離阻止剤, 抗ヒスタミン剤などを日常繁用しているが, これらの薬剤の即時型皮膚反応におよぼす影響は, 原因抗原を正確に判定する上で重要と思われる.著者は室内塵を主抗原とする気管支喘息患者を対象とし, アミノフィリン200mg Formoterol (long actingβ刺激剤) 40μg, Traxanox (chemical mediator遊離阻止剤) 90mgフマル酸
クレマスチン
1mgの常用量を単独経口投与し, house dust (以下HD) 1万倍液0.02mlにて, 経口投与前, 投与後1時間, 2時間, 4時間, 8時間で各々皮内反応を行ない, 各々15分後に判定したが有意な抑制は認められなかった.アミノフィリン200mg, サルブタモール4mg, フマル酸
クレマスチン
1mgの三者を同時に経口投与し, 上記と同じ時間でHD1万倍液0.02mlにて皮内反応を行なったが, 有意な抑制は認められなかった.又, 5%ブドウ糖250ml中にアミノフィリン500mgを加え, 30分間で点滴静注を行い, 点滴開始前, 点滴開始後15分, 30分, 90分で各々の症例における閾値濃度のHDエキスで皮内反応を行った.テオフィリン血中濃度の上昇とともに皮内反応は抑制され, 血中濃度が多少低下してきても抑制率は大となる傾向が認められた.これはテオフィリンの組織内濃度が時間の経過とともに高くなり, 必らずしも血中濃度とは相関しないためと考えられる.以上の結果より, 従来より使用されているアミノフィリン, サルブタモール,
クレマスチン
はもとより, 最近開発されてきたlong acting β刺激剤であるFormoterolや, 経口chemical mediator阻止剤であるTraxanoxも単独量服用では皮膚反応にはほとんど影響がなく, 又, アミノフィリン, サルブタモール,
クレマスチン
の三剤併用でも皮膚反応には影響のないことが明らかとなった.しかしアミノフィリンでは, 点滴静注によりテオフィリン濃度が十分な組織内濃度に至れば, 明らかな皮膚反応の抑制をきたすことが明らかとなった.したがって, アミノフィリン静注後の皮膚反応の実施には十分な配慮が必要であると考えられる.
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