組織型の異なるヒト胃癌由来の腫瘍3株の増殖に対する消化管ホルモンの影響について抗癌剤感受性試験として最近利用されているmicroplate labeling assay (M.L.A.) とHuman tumor clonogenic cell assay (H.T.C.A.) の2法を応用し, 検討した.ヒト胃癌由来の株細胞としてMKN-28 (高分化型腺癌) , MKN-45 (低分化型腺癌) , KATO III (印環細胞癌) を用い, ガストリン, セクレチン, G.I.P., 3種の消化管ホルモンの株細胞増殖に対する影響を, M.L.A.では
3H-TdR取り込み率を, H.T.C.A.では
コロニー形成率
を指標として示した.ガストリン投与においてMKN-45, KATO IIIで著明な
3H-TdR取り込み率の増加を認めたが,
コロニー形成率
では有意な増加は認められなかった.これに対し, MKN-28では
3H-TdR取り込み率,
コロニー形成率
ともに有意な変化はみられなかった.セクレチン投与においてMKN-28, MKN-45では
3H-TdR取り込み率,
コロニー形成率
ともに変化しなかった.しかしKATO IIIにおいては, セクレパン濃度10.0U/mlで
3H-TdR取り込み率が15%まで, またセクレパン濃度1.0U/mlで
コロニー形成率
も20%まで減少した.今回の実験で, 2つの異なるassayで双方とも株細胞増殖抑制傾向を示したのは, KATO IIIに対するセクレチン投与のみであった.G.I.P.投与において程度の差はあるがKATO III, MKN-28, MKN-45すべてに3H-TdR取り込み率の減少が認められた.しかし3株とも
コロニー形成率
では有意な減少はみられなかった.以上より, セクレチン投与によりKATO IIIで細胞増殖の抑制がみられたことは消化管ホルモンによる消化器癌の治療法としての可能性を示唆するものと思われた.
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