小児期における咬合機能の発達を検討する目的で一般臨床で成人に広く用いられている咬合音診査を行い,その咬合音の周波数領域について成人と小児の差異を検討するため,本研究を行った.
被検者は臨床的に顎口腔系に異常を認めない乳歯列期,混合歯列期,永久歯列期の3群,計15名について検討を行った.咬合音の採得は両側眼窩下部よりコンデンサーマイクを用いた口外法で行い,咬合音の到着時間差より早期に到着した片側のデータを採用した.被検者には毎分76回のtooth tappingを指示し,得られた咬合音波形の波形概形および周波数領域についてその構成成分,周波数領域,ピーク周波数,ピーク強度について検討を行った.その結果,
1)咬合音はその概形より2型に大別でき,乳歯列群ではそのほとんどがスライディング
サウンド
であり,混合歯列群,永久歯列群と年齢が増すにつれ
インパクトサウンド
の割合が増加した.
2)周波数域に関しては
インパクトサウンド
,スライデ
イングサウンド
共に永久歯列群が最も高く,次いで乳歯列群,混合歯列群の順であり,スライディング
サウンドはインパクトサウンド
に比較し有意に延長していた.
3)咬合音を周波数分解すると2峰性または3峰性の波形を示し,その最大ピークは乳歯列群で約200~300Hz,混合歯列群,永久歯列群で500~800Hzに位置し,
インパクトサウンド
,スライディング
サウンド
のピーク周波数を検討したところ群内では有意な差は認められなかった.
4)ピーク強度についてはすべての群において最大ピーク(第1ピーク)が低周波数域にあり,第2,第3ピークになるにつれ高域に位置した.また,スライディング
サウンドにおいてはインパクトサウンド
に比較し高域のピーク強度の増加が示された.
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