Trichosporon属菌は、夏型過敏性肺臓炎および日和見真菌症原因菌として重要性が増しているが,種および株の識別は困難な課題であり、ルーチンな検査法がない状況である。表現型による識別にはチェック項目が多く、熟練者でさえも識別困難な場合がある。一方、遺伝子型による識別は D1/D2 シーケンス情報が充実してきており、その簡便さから利用が拡大している。しかしながら、D1/D2 が一致してもその他の塩基配列が異なる場合もあり、D1/D2 のような単一遺伝子のみで識別をすることの落とし穴が残っている。
ゲノムプロフィリング(GP)法は、ランダムPCRの産物を TGGE (温度勾配ゲル電気泳動)で分離展開することにより、簡便迅速に塩基配列情報を反映したパターンが得られ、種および株の識別に有効といえる(第 48、49 回総会「病原性酵母の種同定および株識別へのゲノムプロフィリング(GP)法の応用(1)、(2)」)。
今回、
Trichosporon 属菌を対象に GP 法による種および株の識別を検討した。用いた菌株は
T. asahii をはじめとする全14種35株である。
GPから得られたパターンの目視からは、容易に同一種の類似性を判断することが可能であった。その中で
T. asteroides の IFM 48961と 48608 は類似パターン像となったが、他の
T. asteroides IFM 48960 および 48559 とは異なるパターンを示し、その後の D1/D2 解析結果から
T. japonicumである可能性が浮上した。その他にも GP と D1/D2 解析から菌種名をアップデイトすべき株が以下のように見いだされた。IFM 41129
cutaneum →
coremiiforme、IFM 48558
moniliiforme →
faecale、IFM 48583
montevideense →
coremiiforme。
さらに GP から得られたパターンを専用解析ソフトで定量化し、クラスタリングをしたところ、
T. asahii 10 株は1つのクラスタを形成し、
Trichosporon属の種の識別においても GP の有効性が示唆された。
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