頭部外傷直後のL-アルギニン投与によりパーオキシ
ナイトライト
の指標となるnitrotyrosineが脳ラット組織にいかなる変化をきたすかをWistar系ラットを用いて検討した。fluid percussion modelにより頭部外傷を作成し, L-アルギニン300mg/kgあるいは生理的食塩水を静注し, 頭部外傷2時間まで血行動態及びlaser Doppler法による脳局所血流量の変化を観察した。また頭部外傷12時間, 24時間, 72時間後に脳組織のnitrotyrosine染色を行い陽性細胞数を検討した。対照群とL-アルギニン投与群で, 外傷前の局所脳血流には差を認めなかった。対照群では頭部外傷後に局所脳血流変化が著明に低下し, 120分後までその低下が観察された。一方, L-アルギニン投与群においては, 外傷前後で局所脳血流の低下が観察されなかった。外傷後12時間において, L-アルギニン投与群は対照群と比較して著明なnitrotyrosine陽性細胞数の増加をしめしたが, 時間と共に陽性細胞数は減少してきた。一方, 対照群は, 外傷後24時間後からnitrotyrosine陽性細胞数の増加を認め, 72時間後にも増加していた。これらの結果から頭部外傷後のL-アルギニン投与により脳血流低下を改善出来たが, nitrotyrosine陽性細胞は一時的にせよ増加し, 細胞レベルでは障害が進行している可能性が示唆された。
抄録全体を表示