【目的】
ハンモック
肢位では肩甲骨の外旋が起こると考えられるが,投球障害者の
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肢位において,投球側では肩甲骨外旋運動が減少していることが多い.この現象が,鎖骨挙上と関連性があるのではないかと考えた.
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肢位における肩甲骨外旋と鎖骨挙上の関連性を明らかにしている報告は見当たらない.そこで,本研究は
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肢位における肩甲骨外旋と鎖骨挙上の関連性を検証することを目的とした.
【対象と方法】
投球障害の既往を有する男性3名(以下,I群:年齢27.3歳±3.8),野球競技歴のない健常男性3名(以下,C群:年齢29.0歳±1.7)を対象とした.方法は,上肢下垂肢位と
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肢位にて,立位で前方からレントゲン撮影,上方から写真撮影を行った.レントゲン撮影は,両肩甲帯撮影とし,両鎖骨全長・肩甲骨下角が入るように両肢位の撮影を行った.写真撮影は,両肩甲棘基部・肩峰の4箇所にマーカーを貼り付け両肢位の撮影を行った.両肢位における肩甲骨外旋角,鎖骨挙上角,上肢下垂位の肩甲骨下角-棘突起間距離(以下,SSD)を計測し,さらに上肢下垂位から
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肢位にかけての肩甲骨外旋量と鎖骨挙上量を計測した.
【結果】
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肢位における肩甲骨外旋角はI群で投球側23.3°±3.1,非投球側16.7°±3.5,C群で利き手側25.3°±4.5,非利き手側23.0°±4.6,鎖骨挙上角はI群で投球側22.6°±3.1,非投球側23.3°±1.9,C群で利き手側22.1°±10.9,非利き手側21.7°±11.2,上肢下垂位における鎖骨挙上角はI群で投球側8.7°±0.5,非投球側11.6°±2.2,C群で利き手側5.4°±2.7,非利き手側6.4°±4.5,鎖骨挙上量はI群で投球側14.0°±3.6,非投球側11.7°±4.0,C群で利き手側16.7°±11.9,非利き手側15.4°±12.8であった. また、SSDはI群投球側で10.6_cm_±0.1,非投球側9.3_cm_±0.6,C群利き手側で9.3_cm_±0.5,非利き手側9.6_cm_±0.5であった.
【考察】
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肢位における肩甲骨外旋と鎖骨挙上の関連性を証明することはできなかったが,I群では,
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肢位での投球側肩甲骨外旋角の不足と鎖骨挙上量の増大が起こるという傾向が見られた.臨床場面で,投球障害者の挙上位鎖骨挙上角の減少を多く経験する.結果から,肩甲骨のマルアライメントにより鎖骨挙上量の増大が起こることが推測され,この現象が習慣化することにより鎖骨が過度の運動量を要求された結果,鎖骨挙上の減少が引き起こされると推測された.今後,症例数を増やし検討していきたい.
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