成人の急性咽頭炎における細菌とウイルスの検出頻度とそれらの関連性を調べる目的で,2000年12月から2001年6月までの7力月間に当科を受診した成人の急性咽頭炎患者56名を対象として,咽頭ぬぐい液から細菌分離とウイルスゲノム検出を試みた.ウイルスゲノムの検出にはPCR法を用い,目的としたウイルスはアデノウイルス,インフルエンザウイルスAおよびB,
パラインフルエンザウイルス
1,2,3,とRSウイルスである.
一般細菌は34名(59.7%)から40株が分離された.ウイルスゲノムは19名(33.9%)から21株が検出された.このなかで細菌とウイルスが同時に検出されたのは13名(23.2%)であった.検出された細菌の内訳はH. influenzaeが13株,s. pneumoniae 8株,S. aureus 7株,A群β溶連菌6株,A群以外のβ溶連菌4株,その他の菌が2株であった.β溶連菌群,H. influenzae, S. pneumoniae, S. aureusの4菌種で検出細菌の95%を占めていた.ウイルスでは,アデノウイルスが11株,インフルエンザウイルスが4株,
パラインフルエンザウイルス
1および3が4株,RSウイルスが2株であった.細菌とウイルスともに第1病日に受診した患者から最も多く検出され,ウイルスは21名のうち11名(52.4%)から,細菌は17名(80.9%)から検出された.ウイルスと細菌の両方が検出された症例は第1病日より順に8,1,3,0,1例であり,第1病日に集中していた.急性咽頭炎はウイルス感染後に細菌の2次感染が起きるとされているが,発症後非常に早い時期よりウイルスと細菌の混合感染がみられることが示唆された.
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