1991年8月15日に,琵琶湖南湖の沖帯で湖水を採取し,直ちに実験室へ持ち帰ったのち,4個の三角
フラスコ
に湖水を21ずつ分注し,各種の栄養塩を添加してから,27℃,連続照明下(約2,500lux)で26日間インキュベートした。なお,採取した原湖水中には珪藻のMelosira granulataが最優占しており,湖水のpHは9.0,溶存無機窒素は微量(17μg・l
-1)に存在したが,溶存無機リンは検出されなかった。
培養実験の結果,1)無処理の対照
フラスコ
では,M.granulataに代ってAnabaena spp.(主としてA.affinis)が優占種となり,最大細胞密度は7.4×10
4・ml
-1に達した。2)PO
4-P(約100 μg・l
-1)のみを添加した
フラスコ
,およびPO
4-P(約100μg・l
-1)+鉄(約50μg・l
-1)+EDTA(約300μg・l
-1)を添加した
フラスコ
では,Anabaenaの大増殖が起こり,その最大細胞密度は両
フラスコ
とも約4×10
5・ml
-1に達した。3)それに対し,PO
4-P(約100μg・l
-1)+NO
3-N(約2mg・l
-1)を添加した
フラスコ
では,最初に低密度(50細胞・ml
-1)に存在していたAnabaenaは消失し,緑藻のScenedesmus spp., Coelastrum cambricum, C. microporum, Pediastrum duplex,およびGloeocystis gigasが優占種となった。
以上の結果から,琵琶湖南湖におけるアナベナ・ブルームの発生に関しては低窒素―高リンが重要な因子であると推定された。
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