茂原市は東京から2時間の位置にある地方小都市で,かつてはその中心機能を商業に求めていたが,戦時中から工場が立地し,現在ではむしろ工業都市としての機能が中心となつている.この時期には人口の急増をみたが,このうちには東京からの疎開人口もかなり含まれている.
真空管製造業を主とする茂原の工業は,その単純な作業工程から安価かつ豊富な労働力を多く必要とし,周辺農村部から女子労働力を集めている.一方市内に適当な市場を見出しえない男子労働力は,東京または千葉市へ流出して行き,茂原市は農村部から労働力を集めながら,自市内からほぼ同数の労働力を他地域へ排出している.これは経済的要因がその最大の原因である.給与面で比較してみると,たしかに東京・千葉に職場を求めた方が高給を得られるが,通勤に要する費用・時間を見込むと両者の間には大差はない.結局経済的要因-労働市場の有無-を基礎としながらも,大都市側の住宅事情や両者間のaccessibilityの良さが通勤現象を支えている.
また,商圏その他の日常生活圏においても大都市と密接に結ばれているが,この面でも旧茂原町と農村部では結びつきの強さに差が認められる.
茂原市は農村の中心都市であるとともに,大都市に絶えずひかれている.工業機能を持つ衛星都市といわねばならない.それは茂原の工業が要求する労働力の質的相異によつて生ずるものであり,大都市東京の周辺に散在する他の衛星都市と同様に,東京の機能の分散を受持つ半面,大都市の拡大化を助長する役割をも果している.
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