本研究の目的は,
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P行動およびM行動と部下集団成員の「モラール」との因果関係を明らかにすることである。
銀行組織を対象として, 約15ヶ月の間隔をおいて連続5回, 三隅ら (1970) の開発した
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PMサーペイを実施した。各行員は, 上司の
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P行動 (目標達成機能) および
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M行動 (集団維持機能) ならびに職場集団の「モラール」を評定した。前後2回の調査のあいだに監督者が交替した職場集団が287, 交替しなかった集団が159であり, 集団の規模は監督者を含めて平均7名であった。
主要な結果は以下のとおりであった。
監督者が交替した集団では, 前任者の
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得点と後任者の得点のあいだには有意な相関が認められない (P得点r=. 07; M得点r=. 11)。前年度の「モラール」得点と次年度の「モラール」得点との相関も低い (. 23)。前任者と後任者のあいだでの
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得点の変化と「モラール」得点の変化とのあいだには高い相関が認められる (P. 50; M. 67)。
一方, 監督者が交替していない集団では, 前年度の
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得点と次年度の得点のあいだの相関は高く (P. 64; M. 57), 「モラール」得点についても同様である (. 43)。これらの結果は, 監督者の
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行動の変化が職場集団の「モラール」に変化をもたらしていることを示唆している。
監督者が交替した集団についてさらに対数線型モデルを用いて, 前年度の「モラール」, 次年度の「モラール」および後任の監督者の
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PM行動類型のあいだの関連を分析した。その結果, 後任者の
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行動類型と次年度の「モラール」との交互効果の他に, 前年度の「モラール」と後任者の
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類型とのあいだにも交互効果が認められた。しかしながら後者の効果は前者よりも弱い。また, P型の監督者は「モラール」の高い集団で出現しやすいが, その
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行動は「モラール」を低める傾向があり, 逆に, M型の監督者は「モラール」の低い集団で出現しやすいが, その
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行動は「モラール」を高める傾向があった。一方, PM型の監督者は部下集団における前年度の「モラール」の影響とは比較的無関係に出現するが, その
リーダーシップ
行動は「モラール」を高める傾向が強く, pm型の監督者は「モラール」の低い集団で出現しやすく, その
リーダーシップ
行動は「モラール」を低める傾向が強いことが見出された。
本研究の結果は, 部下集団の「モラール」の状態が
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行動様式を規定する側面もあるが, 監督者の
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行動条件が部下集団の「モラール」を規定する力の方が強いことを示しており,
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PM理論における仮定を支持している。
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