レット症候群
は、1966年に、Rettによって、最初に報告され、1983年、Hagbergらにより、一疾患単位として確立されて以来、多くの研究報告が見られるようになった。我が国においては、1984年のNomuraら、1985年の鈴木らによって、
レット症候群
の症例が詳細に報告されてから、多くの医学的な症例報告が見られるようになったが、教育的な視点からの事例報告は少ない。そこで、教育現場での
レット症候群
の実態を明らかにすることにより、適切な教育アプローチを検討する目的で、本調査を実施した。全国の養護学校の652校(78.2%)の回答結果から、
レット症候群
の者118人、
レット症候群
の疑いのある者34人、同様の特徴を持つ者23人が存在することが明らかになった。
レット症候群
の者のうち、調査の記入漏れのない105人に対して、数量化III類の分析の結果、
レット症候群
の者は、歩行できる者とできない者の群に分かれ、歩行できる者は、移動・身辺処理・対人関係・事物操作等で、比較的能力の高い者が多かった。歩行できない者は、これらの能力の低い者が多く、体質・側彎・発作等の障害を伴う者が多かった。また、歩行できる者の中にも諸障害の多い者や、歩行できない者の中にも諸能力の高い者もいることが分析により明らかになった。これらの分析結果から、
レット症候群
児の諸能力や障害の差が、身体的な障害から生じていること、
レット症候群
の発症時期に密接な関連があることが示唆された。本調査は、5歳から18歳までの児童生徒を対象としたもので、この時期は、安定期から徐々に退行する時期となっている。それゆえに、この時期の様々な能力の改善と維持は、次の退行の減少と防止のために大切な時期と考える。
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