樹脂加工布からの樹脂の脱離に関して, 日常生活において衣料品を使用, 管理する際に遭遇する可能性のある各種要因を単独にとりあげてモデル実験的な検討を行った結果, 樹脂は種々の場合無視できない影響を受けていることが示された.おもな所見を要約すると,
1) 洗浄時の水のみの影響はグリオキザール系レーヨン布が若干の影響を受けた以外, 他の加工布には何ら影響がみられなかった。しかし, 機械作用の影響はいずれの加工布にも若干みられた.
2) 界面活性剤の中では石けんの影響が最も大きく, ノニオン系が最も小さかったが, 加工布間の差異はあまりみられなかった.
3) ビルダーのなかでは, トリポリリン酸ナトリウムの影響が最も少なく, 硫酸ナトリウムの影響が最も大きかった.
4) 塊化ナトリウムの影響もかなりみられ, いずれの加工布も濃度とともに脱離増加の傾向を示した.
5) さらに, 汗の影響も無視できないが, とくに酸性汗の影響が大きく現れた.
6) 漂白剤では, 酸素系はあまり影響を及ぼさないが, 塩素系はいずれの加工布に対しても大きく影響した.
7) 有機溶剤のみでも若干影響がみられたが, ドライクリーニングを行うとさらに脱離が増大し, 有機溶剤処理後湿式洗濯を行うと湿式洗濯のみの影響を上回った.
8) 空気中における摩擦の影響では, 繊維分子と反応するタイプのグリオキザール系より, 初期縮合型のメラミン系, 尿素系のほうが表面的な摩擦作用に対して脱離が大きかった.
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