両性界面活性剤
N-オクチルベタイン(NOB)とNaClとの重水溶液中における相互作用を,
1H-NMRによるスピン-格子緩和時間
T1の測定により調べた。NOB-NaCl混合水溶液系で観測されるNOB構成プロトンの
T1が,図11に示すようなNOBの単分子分散状態とミセル状態,およびそれぞれに対イオンとしてNa
+Cl
-が結合した状態,の四つの化学種についての加重平均で与えられると仮定して解析を行なった。そしてNOBおよびNaCI濃度を変えて測定される
T1値から,30℃,pH7におけるNOBのミセル生成平衡定数
Kon,単分子分散NOBに対するNaClの結合定数
Kss,NOBミセルに対するNaClの結合定数
Ksmを計算した結果,
Kssにくらべて
Ksmは無視できるほど小さいことが示された。このことは,著者らがさきに見いだした両性リン脂質単分子膜に対するカルシウムイオンの吸着が,脂質膜密度の増大によって激減する現象に酷似しており,両性電解質の二次元および三次元の分子会合にさいして,双イオン性の極性基間にイオン格子類似構造が形成され,対イオン固定に変化が起こる分子過程を類推させるものである。
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