経口摂取困難な高齢者に対し経皮内視鏡的胃瘻造設術 (Percutaneous endoscopic gastrostomy: 以下PEGと略す) を施行し, その後約5年 (1989年11月から1993年まで) にわたる長期観察をもとに在宅療養の可能性について retrospective に検討した. 検討項目は, PEG施行例58症例 (平均83.5歳) における周術期 (1週間以内), 短期 (1カ月以内) 及び慢性期 (1カ月以上) 合併症, PEG後の生存期間, 退院症例数, 在宅日数についてである. 在宅療養を一時的にもなし得た症例を在宅群とし, PEG施行後も入院を継続した症例群を非在宅群とした. 周術期合併症としては自己抜去, 腹膜炎, 皮下膿瘍,胃出血例がみられ, 短期及び慢性期での合併症として最も多いのは嘔吐でありその他下痢, 胃瘻チューブからの胃液流出があった. 一人の患者で1週間のうちに発生する合併症の頻度を週間合併症発生率として分析したところ, 周術期が最も発生率が高く, 時間の経過とともに低くなっており, また, 非在宅群に比べ在宅群が低値を示していた.
平均生存日教は460.2日 (在宅群544.7日, 非在宅群419.0日) で, 1年生存率は58%, 2年生存率は36%であった.
全例のうち32.8%の症例で在宅が可能となり, その平均在宅日数は338.5日で, 生存日数を在宅日数で除した在宅率の平均在宅率は58.8%であった. しかし, 非在宅群でもその30.8%において在宅の受け皿の問題により長期入院せざるを得ない状況となっている症例がある. PEG施行によりADLの改善, 本人の苦痛や介護者の負担の軽減がみられることから在宅療養および老人ホーム等での長期療養の可能性があると考えた.
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