【はじめに,目的】 家屋評価は,退院後の生活を見据え,安全な自宅生活や社会復帰に向けたリハビリテーションを行う上で,住宅改修に対する提案や指導の際,必要不可欠である.
今回,福祉用具専門相談員という立場で家屋評価を行い,同意が得られた症例に対し,住宅改修に対する提案を行い,住宅改修を実施後,フォローアップ調査(以下,フォロー)を行い,反省すべき事例があったので報告する.
【方法】 対象症例は80歳代,男性.介護度は要介護3.現病歴として診断されているのは,脳梗塞と認知症.生活は娘夫婦との3人暮らしで,ケアプラン作成前の日常生活活動動作(以下,ADL)は自立.職業は理容師,通勤は徒歩.
本症例は昨年まで仕事を行うなど基本的なADLは行えており,家族からの支援は必要としていなかった.しかし,今年に入り,大幅なADLの低下のため介助量が増え,ケアプラン作成に至った.
家族の問診から昨年までのFIMの点数は93点と考えられたが,初回の家屋評価(以下,初回評価)時はFIM60点という状況になっていた.
初回評価より2週間後,全体の評価・住宅改修のプランの提示を行った.家族の要望を重視し,プラン変更を行った後に,自治体への申請を行い,改修工事を開始した.初回評価から住宅改修工事終了まで約2ヶ月であった.そして住宅改修工事1ヶ月後に再び現状調査を行った(フォロー).
調査項目は各時点におけるFIMの点数,ならびに住宅改修プランでの手すりの取り付け本数とした.
【結果】 FIM点数は,初回評価時60点→住宅改修工事時27点→フォロー時19点.
住宅改修プランでの手すり取り付け本数は,初回評価時11本→住宅改修工事時1本→フォロー時0本となった.
【結論】 本症例は,住宅改修後のフォローを行うことで住宅改修後もADLの変化を継続して追うことができた.このことによって,初回評価時に評価したADLと住宅改修のプランが約3ヶ月後には適切ではない状況になっているということを経験した.多くの場合,退院時と実際の生活環境ではADLの状況に大きな差があったり,以前からの生活スタイルを変更することが難しいため,提案した住宅改修プランが退院後の生活を考慮した上での安全な環境設定とならないことが多い.しかしながら,本症例に入院歴はなく,長年に渡り,自宅生活を継続していたにも関わらず,約3ヶ月という短期間で初回評価時とフォロー時に大きな差が見られた.
今回の調査から初回評価は一時的な評価になりやすく,症例の病状・状態は日々変化しており,そのことを念頭に置き,予後予測も視野に入れながら,特に要介護度を考慮し,住宅改修プランを立てることが必要であると考える.また,住宅改修は一時的な環境の変化でしかなく,根本的な改善になっていないことから,改修後もフォローを行うことによって,病状・状態の変化に応じた環境の提案をすることが重要であると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】今回,ヘルシンキ宣言に基づき個人が特定されないように個人情報の保護,プライバシーの保護に配慮し,本報告にあたり対象者・家族へ事前に了解を得た.
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