公共用芝地の維持管理のあり方を考えるための基礎として, 京都市内の多様な芝地51地点において芝地の土壌理化学性を調査した。測定項目は土性 (簡易法) , pH (H
2O) , 電気伝導度硝酸態窒素および水溶性カリウム (以上電極法) , 全窒素, 全炭素 (以上乾式燃焼法) , 可給態リン酸 (Bray No.2法) , Cl
-, NO
3-, H
2PO
4- , SO
42-, NH
4+, Ca
2+, Mg
2+, K
+およびNa
+の各水抽出性イオン (以上イオンクロマトグラフィー法) および活性アルミニウム (アロフェンテスト) の18項目であった。土性, pH (H
2O) および活性アルミニウム以外の項目は測定値の大きい方に長く尾をひくジブラ分布 (対数正規分布) 型を示した。pH (H
2O) と, 47地点の全窒素の測定値については「緑地」の土壌として求められている基準を満たした。可給態リン酸は半数の調査地において不足とされる値を示したが, 過剰の地点もみられた。主成分分析の結果, 全変動に対する寄与率33%の第1主成分は全窒素, K
+, 全炭素, EC, Ca
2+およびNH
4+が主要な要因であり, 土性に起因する土壌肥沃度を総合的に示したと考えられた。寄与率15%の第2主成分以下の主成分の意味は明瞭ではなかった。相関係数モル濃度からCa
2+はECに与える影響が強いことが推測された。芝草の被度が50%以上の地点はそれ以下の地点に比べて, 全窒素, 全炭素および硝酸態窒素が有意に少なく, Mg
2+が有意に多かった。以上のように, 公共用芝地の土壌の肥沃度は総じて低いにもかかわらず, 芝草の被度が高いのは肥沃度の低い地点であるという矛盾した結果が得られており, その理由について更なる究明を要する。
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