Helicobacter pyloriと胃粘膜疾患との関連について, 研究が進むにつれ, 経口感染が有力視されるようになってきた。それに伴い,
H. pyloriの口腔内での存在の有無や歯周疾患との関連についての問題が提起されている。そこで,
H. pylori菌液の経口投与により,
H. pylori胃
内定
着スナネズミを用い, 口腔内での
H. pyloriの存在について, PCR法によって検索を行った。
PCR法の結果,
H. pyloriの胃
内定
着直後では, 口腔内から
H. pyloriは確認されなかったが, 胃
内定
着60日目以降では舌から, 120日目では下顎から確認された。上顎からは, 120日目までのすべてにおいて
H. pyloriは確認されなかった。さらに, 大柴胡湯の経口投与により, 胃
内定
着菌数を減少させたスナネズミにおいて, 舌からは
H. pyloriの存在が確認されなかったが, 下顎からは確認された。
以上より,
H. pyloriは口腔内に定着することは難しく,
H. pyloriを含んだ胃内容物の逆流等により, 口腔内で確認されたと推測される。特に下顎については, 胃
内定
着菌数減少後も
H. pyloriが確認されたことから, 逆流物の停留や菌の定着の可能性も示唆される。
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