Ⅰ.はじめに
ご本人が家族の一員としての役割を果たし、豊かに地域
生活
を過ごす・・そのために、「ご本人が通いたい通所施設」として大切にしている5つのことと、課題について報告する。
Ⅱ.送迎保障
施設送迎はほとんどの利用者が希望をする。介護の担い手はほとんどが母親であり、母親は家事や育児、介護を行い、夜間まとまった睡眠がとれていない
生活
が現状である。家族が送迎できないと通所ができないのは不利益である。花の郷では吸引が必要な利用者には、吸引ができる職員を増やし、100%施設送迎ができるようになった。送迎保障は通所保障の1つである。
Ⅲ.形態食の提供
食事は常食の他に初期食・中期食・後期食・注入食を提供している。経管栄養では、口から味見をしてから注入をする。「1人1人の食べる力」に合わせて、写真で個別マニュアルを作成し、家庭で簡単に作れる形態食や食品の注入について、家族にも情報提供をしている。毎日継続したい脱感作法やバンゲード法は通所中に行う。行事や外出などでも再調理をして食べたいものを食べるようにしている。
Ⅳ.豊富な活動
「何故、通所施設で花の郷を選んだのか」ということがあったら、それは「利用者に自分らしく楽しく過ごせるからだ」と言ってもらいたい。午前・午後と施設全体で最低9つプログラムを用意し、作業や療育的活動を豊富にしている。利用者の多くは療育的活動を選択する。まずは利用者が自分のために通所をして、そこで何がしたいのかを利用者・家族・支援職員と考える。活動見学会を行い、家族に利用者の様子を直接見ていただくこともある。その他スイミング、季節行事、レクレーション、外出がある。
Ⅴ.医療的ケア
2004年の開所時は、医療的ケアが必要な利用者は家族が付添いをしていた。施設で何をすればいいか答えははっきりしていた。現在は多くの支援職員が医療的ケアを実施している。医療的ケアは支援の正規職員に限らずパート職員も実施している。家族以外に、利用者を理解する人が実施することが大切と考える。なぜなら、利用者は
寄り添う
人に行ってほしいからである。退院指導や訪問医療があっても、医療的ケアに慣れないうちは、日々の
生活
不安があるのが家族の現状である。家族が行
う医
療的ケアに立ち会いや相談を受けることがある。
Ⅵ.連携
安心・安全に施設で過ごすには指導医の存在は欠かせない。医師の考えや意見、指示によって利用者の思いを
生活
の中で形にしていく作業が大きく変わる。病院や在宅で行われる機能訓練や理学療法士に誰でも行える体のとりくみについて指導を受けている。心理相談は支援方法にとどまらず、支援者のあり方を学べる。摂食支援経験者の言語聴覚士からは摂食支援の大切さから利用者を知ろうとする気持ちが職員に定着した。職員の研修は業者などにも依頼をする。その専門家に習うことは、内容などがわかりやすい。そして、ボランティアの存在は、様々な社会経験をしている方の力として利用者の世界を広げ、職員の学びとなる。
Ⅶ.課題
施設レスパイトの多くは医療的ケアが必要な利用者である。家族の事情で緊急に、休日夜間に家庭で過ごせなくなったら誰が利用者
に寄り添う
のか。このようなケースを何度も経験している。通所施設だからこそ通所時間外の利用者の
生活
で課題が見えることもある。利用者が、今より充実した地域
生活
ができるためには、通所施設だけでは限界があるし、ピンポイントで家庭に入る支援でも利用者の
生活に
隙間が生じる。利用者を取り巻く関係性を通所
生活
の視点から、地域に向けて構築しなければ、本当の意味での安心した地域
生活
とはならない。そして、利用者、家族を支えることにはならないのだと思う。その構築と関係づくりが課題である。
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