背景: 注射用ニューキノロン系薬 (ciprofloxacin, CPFX) が本邦でも臨床使用が可能となり, 感染症治療の新しい選択肢として注目されている。しかしながら, 本薬の臨床的位置づけは明確にされていない。
目的: 呼吸器感染症におけるCPFXの臨床的位置づけを明確にすることを目的とした。
対象および方法: ペニシリン系またはセフェム系薬にて効果不十分の肺炎および慢性呼吸器感染症の急性増悪例を対象とし, 封筒法にて無作為にCPFX300mg, 1日2回点滴静注群と, カルバペネム系薬0.3~0.5g, 1日2回点滴静注群に分け有効性, 安全性, 治療期間, 抗菌化学療法日数を比較した。
結果: 試験期間中.83例が登録され, そのうち基準を満たす78例を安全性評価対象, 68例を有効性評価対象とした。両群の年齢, 性別, 感染症診断名, 重症度, 前治療抗菌薬など背景因子はいずれも同等であった。有効率はCPFX群82.7%(24/29例).カルバペネム群71.0%(22/31例) と両群同等であったものの, 1週間以内に試験薬の投与が終了できた早期改善例はCPFX群のほうが高い傾向がみられた (p<0.05)。なお, 入院日数および化学療法日数は両群間に有意差は認められなかった。因果関係を否定しえない有害事象はCPFX群13.5%(5/37例), カルバペネム群12.2%(5/41例) であり, いずれも重篤なものはみられなかった。
考察: ペニシリン系またはセフェム系薬にて十分な効果が得られない呼吸器感染症に対して, CPFX は少なくともカルバペネム系薬と同等以上の臨床効果が得られ, 早期改善効果が高かった。この結果からβ-ラクタム系薬無効のCPFXは呼吸器感染症治療の新しい選択肢として期待されることが示唆された。
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