(1) 種類及び
固有種
臺灣の植物は早田博士の臺灣植物圖譜第十卷(1921)即ちその最後の調査によると當時の種類は170科、1,197屬、3,658種、79變種であつた、又佐々木舜一氏の目録によると1928年十月臺灣自生植物現在數として185科、1,121屬、3,265種、5亞種、312變種、4亞種、27品種となつて居る、これを大ザツパに變種を合して先づ3,700種と見れば大差がないと思ふ、即ち臺灣の植物はその面積の割合から云ふなら甚だ多いことがわかる、臺灣は海抜の高き山岳を有することがその重なる原因であらう。
比律賓群島はその面積臺灣の凡10倍にして顯花植物總數は7,620種、高等隠花植物を加へても臺灣の植物數の3倍とはならぬ、海南島はその面積、臺灣と殆んど同じで(極めて僅に大)あるが、その植物數(目下なほ未調査のものあれど)169科、775屬、1,580種に過ぎぬ。
次ぎに固有屬と
固有種
は如何と云ふに、臺灣植物1,121屬中固有のものは次の通り、即ち10ある。
Arisanorchis Hayata(アリサンムエフラン屬)はCheirostylis Blumeと同じものであり又Suzukia Kudo(シキクンサウ屬)は特産と考へられたが前述の如く琉球(支那國島)にも産する、而して樹木として臺灣に固有なるはタイワンヤツデ屬だけである、これを比島の1,306屬中35の固有屬、ボルネオの1,152屬中47の固有屬に比すれば甚だ少きことがわかる、又小笠原島の如き羊齒類以上の高等植物は僅に380種に過ぎぬが固有屬は5つを算する。正宗氏によると我帝國領土内に野生する屬は1,437でこのうち固有屬として69を擧げた。
固有種
に就ては如何、佐々木氏が臺灣植物3,658種79變種に就きその分布を調査した結果によると
固有種
は1,605種で全植物に對し百分率42.9で寧ろ少きことがわかる。例へば比律賓は顯花植物7620種中
固有種
は5,832で、76.5%に相當する、若し原生林に生育する植物につきて調査すると、
固有種
の百分率は84%に達する、又布哇につき一例をとると705種の被子植物中574が
固有種
で即ち81%を占めて居る、又ロツクの布哇樹木誌によると219種中93%が
固有種
である。又小笠原島の木本植物は豊島恕清氏の調査によると喬木59種中、
固有種
45、即ち76.2%、灌木、62種中、
固有種
44、即ち70.9%である、而して臺灣の樹木は後述するがその
固有種
の百分率は51.6%に過ぎぬ。
如此、臺灣の植物は種類が比較的多い、然し固有屬及び
固有種
が少い、しかも種類に比し屬の數が比較的多いことがわかる、是れ即ち臺灣が永い間大陸に連結し居つたことを證明するものと云はねばならぬ。
(2) 臺灣森林の代表樹木
臺灣森林の代表樹木は二つの方面から觀察せねばならぬ、即ち一つは量的方面で他は種類である、種類の多いもの必ずしも量的に多い譯ではない、又これと反對の場合も同時に成り立つ、臺灣の針葉樹は種類から云ふと濶葉樹に比し少いが量的には比較的甚だ多いと云はねばならぬ、竹類の如きも同様である、しかし量的の調査は困難であるから之れを除外し種類のみにつきて述べる。
樹木としての種類を最も多く含む科は次の通り、括弧内は樹木の種類
更らに
固有種
を最も多く含む科を順位に列記すると次ぎの通り、括弧内の數字は百分率
臺灣樹木中廣き分布を有する薔薇科及び大戟科を除き山毛欅科と樟科とが多くの種類を含むことは注意すべき點で、この二科は南清地方に於て最もよく發達し順次に支那を北上して臺灣を經て日本の南端に及ぶ、即ち臺灣が支那大陸と最も關係深きことがわかる、又その
固有種
の百分率が共に大なることは臺灣が支那大陸との分離後相當の期間を經過したることを證するものと云ふことが出來る。
(3) 臺灣樹木の地理的分布
佐々木舜一氏が臺灣植物に就きてその分布の調査をなしたことを前にも述べたが今同氏の結果を參考の爲め次に表示する。
次ぎに余は樹木につきてその分布を調査した、その種類は89科、323屬、726種、39變種(計765)その結果は次表の通り。
今屬につきて分布の百分率により順位を列記すると次の通り。
印度、支那、比律賓、馬來、南亞細亞、舊日本、琉球、濠洲、アフリカ、汎熱帶、固有。
即ち屬としては熱帶性のものが比較的多く特に印度と支那に分布するものが多い、同様に種類につき分布の百分率を順位に列記すれば次の通り。
固有、支那、比律賓、舊日本、琉球、印度、南亞細亞、馬來、汎熱帶、濠洲、アフリカ。
即ち前掲の佐々木氏の分布の割合と必ずしも一致しない、同氏によれば舊日本が
固有種
に亞ぎ大で支那系よりも多きは支那を三區域に分ちたる爲めと考へられる、なほ各地の分布につきては既に論じたるを以て省略する。
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