1979年から1986年までに当施設で治療した転移性脳腫瘍59例(単発41例, 多発18例)について, 平均生存期間及び生存曲線から治療成績を検討した.
手術施行群(全摘群)の平均生存期間は6.7ヵ月であり, 非手術群の6.3ヵ月よりやや長かつた. 一方, 放射線治療群は8.4ヵ月であり, 非施行群の3.2ヵ月と比較して有意に長かつた(p<0.01). 単発転移巣に関しては, 全摘群では術後2ヵ月までの生存率は非手術群より有意に高値であつたが(p<0.05), それ以後の期間では低下していた. また単発巣の放射線治療群では, 7ヵ月目までの生存率は非施行群より有意に高値であつた(p<0.01). しかし単発巣全摘後の放射線治療に関しては, 術後4カ月目までの有意差は見られず, 手術が効果的であつたことを示唆した. その中で, 単発巣全摘後の放射線治療追加に反して, 3例の早期再発例を経験した.
以上より, 次の治療方針を作成した. (1)症状を呈している転移性脳腫瘍に対しては, たとえ多発性であつても2ヵ月以上の延命が期待できる症例には積極的に手術を行う. (2)原則として, 術後に放射線治療を追加するが, 単発巣でしかも全摘できた症例には放射線治療は追加しない.
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