本稿は, わが国における今後の図書館財務研究のための指針となる, 理論構造の全体図を描くことを目的とする。まず, 資金調達, 予算編成, 予算執行, 財務監査の四つの分野で, わが国の図書館財務環境の現状を述べ, それに関する従来の研究の問題点を踏まえたうえで, 今後対象とすべき「図書館財務」概念および関連要因を明らかにした。次に, 図書館財務論の理論的構成要素となる図書館財務過程のうち, 予算編成, 予算執行, 会計監査等について, わが国の
官庁会計
の枠組に沿ってその問題点を論じた。最後に, 以上の分析をもとに, 図書館財務論を理論的に構成する3領域として, 財務管理, 財務過程, 財務経営資源をあげ, さらに各領域の論点を提示した。
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