戦後日本の急速な経済発展は,日本人の食生活を大きく変化させた。消費の面では,供給カロリーと肉食の増加,主食の変化,食の外部化・簡素化,嗜好の高級化・多様化等である。これらの変化は,生産から加工,消費までを包括する日本のフードシステムの物質循環を大きく変貌させた。本研究では,食習慣の変化がバイオマス資源の利用に与える影響について,日本のフードシステムのエネルギーフロー分析という視点から議論することを目的とした。1962年から1997年までの間における日本のフートシステムのバイオマス資源(NPP)の投入量,損失量及び転換効率の変化を分析した。その結果から,次のことが分かった。(1)日本のフードシステムのNPP投入とエネルギーロスは35年間でそれぞれ2.01倍,2.12倍に増加し,1997年には1,054×10
12kcal/yr,977×10
12kca1/yrになった。その結果,食システムのバイオマス資源の総転換効率は36%減少した。(2)1人当たりでみると,バイオマス資源消費量(NPP)とエネルギーロスはそれぞれ1 .5倍,1.6倍に増加し,1997年には22,918kcal/day,21,244kcal/dayになった。(3)輸入食料・飼料の増加に伴い,日本の食生活に起因するエネルギーロスのうち,海外で発生したものの割合は1962年の29%から1997年の60%に増加した。(4)食料消費段階で発生したエネルギーロスは,35年間で2.16倍になった。フードシステムの効率の改善には,とくに消費段階の食物利用効率を高めることが有効な方法であることを示した。
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