2003年10月-2004年9月の間に全国12施設において, 下気道感染症患者399例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性および患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 原因菌と推定された細菌474株のうち469株について薬剤感受性を測定した。分離菌の内訳
はStaphylococcus aureus76株,
Streptococcus pneumoniae81株,
Haemophilus influenzae84株,
Pseudomonas aeruginosa (nonmucoid株) 56株,
P.aeruginosa(mucoid株) 11株,
Klebsiella pneumoniae36株, M
oraxellasubgenus Branhamella catarrhalis24株などであった。
S
.aureus76株のうち, Oxacillin (MPIPC) のMICが2μg/ml以下の株 (Methicillin-susceptible
S.aureus: MSSA) およびOxacillinのMICが4μg/mL以上の株 (Methicillin-resistant
S.aureus: MRSA) は, いずれも38株 (50.0%) であった。MSSAに対しては, Imipenem (IPM) の抗菌力が最も強く, 0.063μg/mLで全菌株の発育を阻止した。MRSAに対しては, Vancomycinの抗菌力が最も強く, 2μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Arbekacinの抗菌力も良好で, 4μg/mLで全菌株の発育を阻止した。
S.pneumoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系抗菌薬が最も強く, 0.125-0.5μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Cefozopran (CZOP) の抗菌力も良好で, そのMIC90は2μg/mLであり, 4μg/mLでは全菌株の発育を阻止した。これに対して, Cefaclor(CCL), Erythromycin (EM), Clindamycin (CLDM) では, 高度耐性株 (MIC:≥128μg/mL) が, それぞれ9株 (11.1%), 35株 (43.2%), 33株(40.7%) 検出された。
H.influenzaeに対する抗菌力はLevofloxacin (LVFX) が最も強く, 0.063μg/mLで83株 (98.8%) の発育を阻止した。ムコイド産生および非ムコイド産生
P.aeruginosaに対しては, Tobramycin (TOB) が最も強い抗菌力を示し, そのMIC90は2μg/mLであった。CZOPの抗菌力も比較的良好で, そのMIC
90は, ムコイド型に対して4μg/mL, 非ムコイド型に対して8μg/mLであった。
K.pneumoniaeに対する抗菌力は, CZOPが最も強く, 0.125μg/mLで全菌株の発育を阻止した。
M (B.) catarrhalisに対しては, いずれの薬剤も比較的強い抗菌力を示し, MIC90は4μg/mL以下であった。
呼吸器感染症患者の年齢は, 70歳以上が全体の54.1%と半数以上を占めた。疾患別では細菌性肺炎と慢性気管支炎の頻度が高く, それぞれ46.1, 30.6%であった。細菌性肺炎患者から多く分離された菌は
S.aureusおよび
H.influenzae (18.6%および18.1%) であり, 一方, 慢性気管支炎患者からは
S.aureus (16.9%) および
S.pneumoniaeが比較的多く分離 (14.9%) された。抗菌薬投与前に呼吸器感染症患者から多く分離された菌は,
S.pneumoniaeおよび
H.influenzaeで, その分離頻度はそれぞれ20.6%および21.5%であった。前投与抗菌薬別に分離菌種を比較したところ, 前投与抗菌薬がセフェム系あるいはマクロライド系抗菌薬であった症例では,
P.aeruginosaが比較的多く分離され, キノロン系抗菌薬では
S.aureusが比較的多く分離された。
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