臨床上, 肺移植後の
拒絶反応
の診断には臨床症状・胸部X線写真撮影・呼吸機能検査を基にステロイドのパルス療法に対する反応性をみるか経気管支肺生検による病理診断により決定されている。しかしそれは多分に経験的であり, 客観的で特異的な診断法はいまだみられない。われわれは
拒絶反応
のモニタリング方法として, 気管支肺胞洗浄 (BAL) にて得られた細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) の細胞傷害活性 (CTL活性) を測定することにより,
拒絶反応
診断の可能性について検討を行った。 雑種成犬を用いて同種左肺移植を施行し, 経時的に胸部X線撮影・細胞傷害活性の測定を行い, 同時期に得られた病理組織標本と比較検討した。またBALより得られたCTL活性が高値を示した時点でステロイドのパルス療法を行い, その反応性を確認し, 急性
拒絶反応
に対する治療効果について検討した。 その結果, 1) 胸部X線上
拒絶反応
の進行に伴い, 浸潤影の強増が認められたが, 肺炎でも同様な所見がみられ, その鑑別は困難であった。2) BALでのCTL活性値>10%を
拒絶反応
と診断した場合, sensitivity 78.7%, speci-ficity 95.8%と高い正診率が得られた。一方肺炎ではCTL活性の上昇はみられなかった。3) 本法にて診断された
拒絶反応に対しパルス療法を行ったところ拒絶反応
の消失が認められた。 以上より本法は短時間で測定することが可能で, 実際の臨床においても胸部X線所見や臨床症状と組み合わせることによって,
拒絶反応
の診断, 肺感染症との鑑別を客観的かつ特異的に行うことができ, 急性
拒絶反応
の治療の指標になるものと考える。
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