目的 日本の栄養政策では,都道府県と保健所設置市及び特別区(以下,
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市等)における飲食店等を通した食環境整備が重視されている。しかし,飲食店等を通した食環境整備のマネジメント実施状況の実態は把握されていない。本研究では,都道府県と
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市等でのマネジメント実施状況の実態を明らかにすることを目的とした。
方法 全国の都道府県47,
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市等106の自治体を対象として,2020年10月に郵送調査を実施した。食環境整備のマネジメント実施状況として,栄養・食生活の実態把握,組織体制,目標設定有無,飲食店等を対象とした食環境整備制度(以下,制度)有無を尋ね,制度実施自治体には制度の対象・普及取組・プロセス評価・改善について尋ねた。
結果 回答が得られた自治体のうち,都道府県39/42(92.9%),
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市等57/82(69.5%)の制度実施自治体を対象とした。実態把握として,過去5年以内の地域住民の栄養素等摂取量の把握割合は,都道府県84.6%,
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市等14.0%であった。組織体制として,管理栄養士・栄養士人数の中央値は,本庁の食環境整備担当部署で都道府県2人,
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市等2人であった。食環境整備の目標設定割合は,都道府県69.2%,
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市等54.4%であった。制度の対象の食事は,外食が都道府県94.9%,
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市等100.0%,中食が都道府県87.2%,
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市等93.0%であった。制度の普及取組は,自治体内や他自治体との連携割合が都道府県69.2%,
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市等66.7%,外部組織への普及委託割合が都道府県15.4%,
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市等15.8%であった。制度のプロセス評価は,登録店舗・事業者数の把握割合が都道府県87.2%,
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市等89.5%,管内全体の飲食店等数の把握割合が都道府県17.6%,
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市等21.6%であった。制度の改善は,更新制度の設定割合が都道府県33.3%,
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市等40.4%,制度の見直し割合が都道府県71.8%,
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市等33.3%であった。
結論 新型コロナウイルス感染症流行下で過小申告の可能性があるが,制度実施自治体では,
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市等で栄養素等摂取量の把握は少なく,都道府県と
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市等ともに食環境整備の目標設定が5-7割であった。いずれも登録店舗・事業者数の把握が9割である一方,母集団となる管内全体の飲食店等数の把握割合は2割であった。更新制度を設定している自治体は3-4割であった。
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