著者らは山羊の血清学的体質に関する研究の一環として,先ず山羊の正常血清中の抗体の検索,同種血球免疫による型的抗体の作製並びにそれによる新血球抗原の分類を試み,次の結果を得た.
1) 山羊正常血清中には同種血球凝集素並びに溶血素が存在するが,その出現頻度は低く,抗体価は1~2倍程度であつた.
2) この正常抗体は易熱性で56°15分間加熱することにより容易に不活性化された.
3) 同種血球免疫により4つの単一な型的溶血素を産生した.これら型的溶血素により4つの新らしい血球抗原,Ch
1, Ch
2, Ch
3およびCh
4を分類した.これら各抗原はG1,G2凝集原とは質的に異なるものであつた.
4) 抗-Ch
1,抗-Ch
2,抗-Ch
3および抗-Ch
4血清の抗体価はそれぞれ32倍,8倍,16倍および32倍であつた.
5)
日本ザーネン
種372例におけるCh
1,Ch
2 Ch
3およびCh4抗原の出現頻度はそれぞれ18.82%,67.47%,29.84%および72.04%で,Ch4抗原のそれが最も大きく,Ch1抗原のそれが最も小さかつた.また集団間の出現頻度に大きな差異が認められた.琉球列島における在来種および雑種301例についての各抗原の出現頻度はそれぞれ7.31%,39.86%,30.56%および22.92%であつた.
6) これら4つの抗原の組合せにより山羊の血液型は理論的には16型に分類されるが,そのうちCh
1-,Ch
3-およびCh
1Ch
3-型に相当するものはみられなかつた.
日本ザーネン
種372例における各型の出現頻度中,Ch
2Ch
4型が最も大きく22.85%(85例)を示した,またCh
1型,Ch
3型およびCh
1Ch
3型の存在は認められなかつた.
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