Cephacetrile (以下CECと略す)は, スイスCiba-Geigy社で合成された半合成Cephalosporin系抗生物質で, 下記の化学構造をもつ。
CECは, 既存のCephalosporin系抗生物質と同様, 広範囲の抗菌力をもち, その作用は殺菌的である。かつ, その毒性は少なく, 特に腎毒性は極めて軽微と報告されている1, 2)。
著者らは, さきに, 臨床材料から分離した起炎性の明確な肺炎球菌26株を用いた基礎的研究で, CECのこれら菌株に対する最小発育阻止濃度(以下MIC)がすべて1.56μg/ml以下で, 半数の13株に対しては0.05μg/ml以下であり, その分布はCefazolin(以下CEZ)のMIC分布とほぼ等しいこと, また, CECのラットにおける臓器移行の検討では, 腎に次いで肺によく移行すること, さらに非盲検臨床検討において呼吸器感染症に対する治療成績がすぐれていることを明らかにして報告した3, 4)。
今回我々は, この研究を一歩進め, 本剤CECの細菌性肺炎および肺化膿症に対する臨床上の有用性, すなわち臨床効果と副作用をCEZと比較して評価するために, 二重盲検法による比較試験をおこなつたので, その成績を報告する。CEZは, 細菌性肺炎などの呼吸器感染症に繁用されており, 上記の我々の研究結果からも, CECを臨床的に評価するさいの対照薬として適切なものと考えた。
本研究は, 表記20施設の共同研究としておこない, コントローラーは, 東邦大学・桑原章吾教授と, コントローラー委員会委員・帝京大学・清水直容教授とに依頼し, 両剤およびその包装の識別不能性と含量の確認, 無作為わりつけとわりつけ表の保管および開封, 開封前後のデータの管理, 集計・解析など, 試験全体としての公平性の吟味を委嘱した。
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