〈緒言〉DPC を導入している病院においては,入院医療
における薬剤費のマネジメントが経営上重要となる。その
手段としては後発品の使用促進・薬剤使用の適正化などが
主となるが,それらとは別の問題として入院中の他科受診
が挙げられる。DPC においては主となる疾病以外への治
療に対して診療収入を得ることができない。しかし当院の
入院患者においては,元々複数の診療科を受診している場
合が多く,入院中であっても他科への外来受診は現状続け
られている。そのため他科で処方された薬剤がある場合は
持参薬として積極的に利用することが望ましい。また,当
院では外来も院内処方であるので,持参される薬のほとん
どは当薬局で調剤したものである。今回はこの持参薬の利
用による薬剤費節減の観点から,DPC 導入病院における
他科受診への費用効果について考察を行った。
〈方法〉平成21年1月から同年3月の期間において,当薬
局に持ち込まれた持参薬の処方指示箋から使用された薬剤
量を算出する。また,持参薬を用いずに入院中外来として
処方された内服薬の使用量を調べ,薬価での比較をする。
持参薬とは入院中に持ち込まれた薬価収載品を指すことと
する。
〈結果と考察〉期間中の入院中外来の処方は614枚あり,
持参薬処方指示箋は210枚であった。薬価で比較したとこ
ろ,入院中外来と持参薬ではおよそ10:7であった。入院
中外来に比べ,持参薬では処方日数が長くなる場合が多
く,処方1枚あたりの薬価も持参薬の方が高くなる傾向に
あった。
〈今後の展望〉入院中の他科受診は病院経営の上ではマイ
ナスとなるが,普段外来で行っている投薬治療を中断する
ことは望ましいことではない。必要な薬剤を削ることなく
マイナスを抑える努力をしていく上で,他科で処方された
持参薬の積極的な利用は一つの手段である。今後は費用面
での評価の方法について更なる検討をしつつ,薬剤使用の
合理化について模索していきたい。
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