最近, わが国では, 従来の環境報告書を充実・発展させて, サステナビリティ報告書や環境・社会報告書等 (以下, 総称してCSR報告書と呼ぶ) を自発的に発行する企業が増加する傾向にある.そこで, 本稿では, Freeman (1984) に端を発するステークホルダー・アプローチに立脚して, 社会責任活動および個人投資家に対する企業の戦略的姿勢を中心に, 日本企業のCSR報告書の質の規定要因を実証的に検証する.そして, 規模の大きな企業ほど, また企業社会業績 (CSP) が高い企業ほどCSR報告書の質が高い傾向にあるという証拠を提示する.また, 限定的ではあるものの, 消費者に近い業種や社会や環境に大きな影響を与え得る特定の業種に属する企業のCSR報告書の質が高い傾向にあるという証拠を提示する.さらに,
株主優待
制度を設けている企業のCSR報告書の質が高い傾向にあるという証拠を提示する.これらの証拠は, ステークホルダー・アプローチの見方を実証的に支持するものである.
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