口腔粘膜の扁平上皮癌, および上皮の増殖性病変の細胞診において, 歯間ブラシによる細胞採取法が有用であるか, 綿棒採取法との比較検討を行った.
対象は扁平上皮癌 (高分化型65例, 中等度型7例, 低分化型1例), 良性病変および自然治癒47例で行った.
良悪性問の細胞数は歯間ブラシによる採取では綿棒の約2.5倍の細胞数の増加がみられ, 細胞集塊数では約4.7倍の集塊数がみられた.腫瘍径による細胞集塊出現数ではT2 (2.1~4cm) はT1 (2cm以下) の約1.2倍の細胞の増加がみられ腫瘍径が大きくなるほど細胞数が多くなった.
肉眼的腫瘍発育形態による細胞数については潰瘍型, 硬結型, 乳頭型, 白斑型, 肉芽型, いずれも2~3倍の細胞数の増加がみられ, 特に外向性発育を示す白斑型, 肉芽型において顕著であった.歯間ブラシによる採取法の利点としては第一に細胞数の増加, 第二に細胞集塊として採取されるため, 腫瘍細胞間の極性の乱れ, 核間距離の不整, 細胞密度が観察可能な点があげられる.さらに細胞分布は綿棒採取法に比べ均一に塗抹される場合が多く, 壊死物質や炎症細胞に重なった細胞の見落としを防ぐことができた.
以上の結果より, 口腔病変, 特に上皮の増殖性病変における細胞診断に歯間ブラシは有用と考えられた.
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