人文社会科学系は、小集団である「ゼミ」運営に関して予算があまり計上されていない。それにもかかわらず、大規模大学のゼミは、大人数の学生が所属する為、まちづくりのようなフィールドワークを主としたゼミ活動を実施する際、その費用が大きな負担となる。ここでいう費用は主に旅費にあたる。実際にフィールド先の地域課題に向き合い、その解決に向けた活動をする事は、学生にとって深い学びに繋がり、かつ、地域にとっても大学を通した学生の活動を目の当たりにする事での活力を得る事に繋がる。しかしながら、フィールドワークを実施したくとも、金銭的理由よりそれが叶わないゼミも存在している。
大学経営は厳しさを増しており、外部資金の獲得が重要な課題となっている。これまでの大学は、教育と研究と社会貢献を主な柱とし、限られた関係性(学生、企業、地域)の中で活動してきた。一方で、これからの大学は、この柱を広く社会全般にアピールし、真に外に開かれた関係性を作り、多くの賛同者や支援者を得る必要がある。そこで、本研究では、大学の小集団単位での外部資金の獲得という先進的な取組みを実施する事とした。具体的にはシェアリングエコノミーの仕組みを活用し、まちづくりを主軸におく人文社会科学系ゼミを主体としたクラウドファンディング(以下、CFと表記)で、費用を確保する事を試行し、その意義と課題を把握する事を目的とした。
本研究において、運用の特徴としては、ゼミ生自身がプロジェクトページの新着情報の更新とSNSを活用して情報発信を行い、支援希望者に対して広く呼びかける活動を実施した。そこで、ゼミ生と支援希望者の信頼関係を構築するように努めた。CFの実施概要をまとめ、1日毎のPV数と支援金額の推移より、分析と考察をまとめた。また、CFの実施主体であったゼミ生へ、内省化も踏まえたアンケート調査を実施し、得られたデータのグループ化と統計分析を
実施した。
今回実施したCFでは、38日間の実施期間で、96名の支援者より、130.9万円の支援を得る結果を得た。また、CFを行う事でゼミ生一人ひとりのメタ認知も含めた内省化に繋がった。この取組みを通して、人文社会科学系ゼミを主体としたCFで、ゼミ活動の費用を確保する事は可能である事がわかった。また、教育的な効果も図れる事もわかった。
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