ファブリー病はX染色体性遺伝で, αガラクトシダーゼ (α-GAL) 活性の低下により, セラミドトリヘキソシド (CTH) が臓器に沈着し種々の症状を起こす疾患である。ヘテロ型である女性ファブリー病患者は無症状, あるいは臓器障害が軽症のものから, ヘミ型男性ファブリーと同程度に臓器障害を有するものまで様々であるといわれている。われわれは, 慢性腎不全, 心肥大, 脳梗塞など様々な症状を有したヘテロ型ファブリー病の2症例を経験し, α-GAL酵素補充療法を施行したので報告する。
症例1は47歳女性。■(27歳) 第2子妊娠26週前後で蛋白尿と浮腫が出現し, 妊娠中毒症と診断された。産後も蛋白尿が持続したため, ■に行った腎生検でゼブラ体を認め, ファブリー病と診断された。■心筋生検でも同様の所見が得られた。その後重症高血圧, 腎機能低下を認め, 診断確定13年後の■からα-GAL酵素補充療法を施行したが, ■透析導入となった。
症例2は40歳女性。■に重症高血圧で受診。糖尿病, 高脂血症, 膠原病がないにもかかわらず, 脳梗塞, 心肥大, 陳旧性心筋梗塞, 腎不全の合併を認め, 持続する四肢の痺れ感と疼痛, 心疾患死の家族歴からファブリー病を疑い, 皮膚生検により確定診断をした。■に酵素補充療法を開始し, その後腎機能悪化を認めていない。
ヘテロ型である女性ファブリー病患者は, これら2症例のように著しい臓器障害を示すものもあり, 慢性腎不全の原因疾患として女性例においてもファブリー病を考慮する必要がある。また症例2に示したように, 早期のα-GAL酵素補充療法は臓器障害の進行を抑制する効果があると考えられる。
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