神戸に実現した大規模複合商業施設「神戸HL計画」 (1992年完成) の基本計画過程に提出される模型, 平面図, 透視図等と, 「設計打合記録」に出現する言語との関係性を時系列的に分類整理し, その変遷をたどることで「神戸HL計画」の建築形態構成過程を考察する.その結果, 基本計画過程では, (1) 「概念語」は毎回異なる言語が出現しては消える言語の使い捨てが行われ, 設計者は特定の「概念語」にイメージを固定せず, 多方面から様々な概念を探る傾向がある. (2) ごく少数の「形態語」が頻繁に出現し, 設計者はこれらの語を一種のキーワードとして使用し, この傾向は建物完成時期においても同様である. (3) 基本計画過程に出現する「形態語」のおよそ半分が建物完成時期においても設計者の思考の中に温存され, 建物完成時期の建築形態の基本的イメージは, 既に基本計画過程に想起・認識されている. (4) 基本計画過程は, (A) 図面表現を行わず, 粘土模型により建物規模を大づかみに表現する段階, (B) フリーハンドによる手描平面図とダンボール模型により建物配置や空間構成を表現する段階, (c) 寸法線が記入された手描平面図と立面図を添付したスタイロフォーム模型により外観を表現する段階, (D) 模型の縮尺を上げたデザインボード模型により内部空間を表現する段階に分かれ, 建築形態構成は言語表現と図面表現の相乗作用によって造形化される.
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