抄録
本研究では、企業城下町における中核企業の公共的役割の変化と中核企業と行政の関係性およびそれに伴う企業城下町の市街地構造の変化を明らかにすることを目的とする。本研究では、宇部興産の社史や宇部市史の資料、宇部興産内部資料や宇部市議会録による文献調査および宇部興産等の関係機関へのヒアリング等で調査を進めた。その結果、中核企業が市街地形成に果たした役割は以下のようにまとめることが出来る。企業発足からバブル崩壊までは中核企業が市街地形成を主導してきたが、バブル崩壊後には企業経営の悪化から不動産資産処分により行政との矛盾が生じている。以上より、宇部市において宇部興産の公共的役割は徐々に低下してきているが市街地形成に与える影響は少なくない。そのため行政との新たなるパートナーシプが市街地形成の取り組みが必要とされている。