【目的】未だ続く福島県産水産物に対する風評影響を払拭し,消費者の購買意欲を促すため,福島県で水揚げされるマアナゴのサイズ別調理用途の提案を目指して,サイズごとの特性の解明に取り組んでいる。市場価値が高い300~500 gのマアナゴに加え,これより大型,小型サイズも含め,サイズの相違による調理品の品質への影響を官能評価及び成分分析から追究した。今回は分析型官能評価により,各種調理品における品質の相違点を明らかにすることを目的とした。
【方法】マアナゴは,体重により小・中・大の3区分に分類し,背開きにして冷凍保存した。加熱方法が異なる調理品として焼き穴子,天ぷら及び
煮穴子
を調理し評価試料とした。評価項目は言葉だしと予備評価を経て調理品ごとに決定した。評価時には目視からサイズを判別できないようアイマスクを装着し,小・大サイズの品質について中サイズを基準に5段階評点法にて評価した。
【結果】「小サイズ」は,いずれの調理品も口中で感じる肉厚感,うま味,弾力の項目において中サイズとの有意な差が見られなかった。「大サイズ」は,各調理品に共通して中サイズよりも肉厚であり,うま味とジューシーさが強いと評価された。小・大サイズの調理品において,生臭さや小骨の多さの項目で負の評価はなく,中サイズに劣る点は抽出されなかった。さらに,「小サイズ」では焼き穴子はあっさりした味わいになるものの,天ぷらの味は強いと評価され,「大サイズ」では天ぷらの香ばしさや
煮穴子
の弾力が特徴として抽出された。このことから,サイズごとにマアナゴの用途を提案できる特徴を持つことが明らかとなった。今後は嗜好型官能評価を実施し,成分分析と併せて適した活用方法の提案につなげたい。
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