2009年8月6~11日, 台湾は台風8号(台湾では莫拉克台風と呼んでいる)によって, 200年確率という大豪雨災害をうけて, 全土にわたって大きな水害・土砂災害を受けた. とりわけ中部~南部の災害はひどく, 高雄県甲仙郷の小林村では8月9日の早朝, 旗山渓両岸の大崩壊とそれによる天然ダムの決壊により村の集落のほとんどが流失し, 600~700人が亡くなった. 8月8日はこの地方では “爸々節” という父親を祝う日で, 各地から子供達が集まって来ていたというが, その実数がわからないため, 正確な死者数さえわからないのである. 同じ日の午後, 南投県信義郷の
神木
村では, 隆華国民小学校が鉄砲水(堰き止め湖の決壊による)の直撃を受けて, 完全に破壊されるという大被害を受けた.
これらの災害は, 200年確率という大豪雨(台湾の年間降雨2,500mmのところに, 3日間で2,600mmが降ったとも言われている)が最大の誘因であるが, 山地が急傾斜・流れ盤のうえ, 過去の崩積土が全山に広く分布していて, それらが多量に水を吸って流動化して大崩壊を起こしたということや, 村落や小学校が現河床から5, 6mの比高しかない低位段丘面上に立地していたという素因も見逃すことができない.
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