カードラン(Curdlan)の水懸濁液を種々な温度で加熱して得られるゲルについて,その熱不可逆性および熱可逆姓に注目して粘度測定,光学顕微鏡的観察および光の透過率を灘定してしらべた.カードランの水懸濁液の粘度および光の透過率は,63°Cまで加熱した後,その温度以上に加熱するか,または冷却するかによって非常に異なる.すなわち,その温度以上に加熱すると,比粘度は熱不可逆性を示すのに対して,その温度まで加熱して冷却し,再びその温度まで加熱する過程では熱可逆性を示す.一方,光の透過率は63°C以上で徐々に減少するが,63°から冷却すると約40°Cまではほぼ一定で,390°Cから急速に減少する.顕微鏡で加熱したカードランの水懸濁液を観察すると50~63°Cでカードランの粒子は急激に膨潤し,それより温度を上昇させてもほとんど変化しない.したがって,カードランの水懸濁液の加熱によるゲル形成は,第一段階として,澱粉の場合のように膨潤がおこり,ついでカードラン分子の疎水性結合による三次元的網目構造が形成されるものと考えられる.また,63°Cまで加熱して冷却した場合の熱可逆性ゲルは,膨潤したカードランの水素結合による三次元的網目構造にもとつくものと考えられる.
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